"Mr&Mrs Ogiwara detective office" 事件簿1
翔は自分の浅慮の所為でみんなに迷惑をかけて、それをリカバリーするにも他人の力を借りなければならない自分に嫌気がさした。

でもそれだからこそ借金は毎月きちんと返さなければならない。それでないと智子にもまた迷惑をかけてしまう。

翔は深夜の道路工事などの警備の仕事や土曜日や日曜日に一日コンビニのバイトを入れて、朝から晩まで働いた。

そんな翔を智子は心配してくれて夜の警備の仕事に行く前にアルミホイルに包んだおにぎりをそっと持たせてくれたり、栄養ドリンクを果樹園のお昼の時間にくれたり、果樹園の仕事がお休みの日には翔のアパートで夕食を作ってくれたりした。

翔は果樹園が休みでもコンビニでアルバイトをしていたので、智子が来て掃除や溜まった洗濯をしてくれるのだ。

そんな風に智子の優しさに甘えて過ごしていたが、1年後智子が保証人になっていたことが分かってしまった。

それまでは二人の事には目を瞑っていた社長も、許してはくれなかった。

翔は果樹園を解雇された。

社長の怒りは智子にも向いた。

智子は部屋から出してもらえず、携帯も解約されて新しい携帯には誰の番号も引き継げなかった。

翔も携帯を取り上げられてしまった。

そしてこの街を出でて行けと言われてしまったのだ。

智子の保証人は解約できなかった。

それをするには残金をすべて支払わなければならなかったのだ。

仕方なく社長も目をつぶってくれたが、智子の顔に泥を塗るようなことは絶対にするなと念を押された。

果樹園を去る日智子の兄で専務の裕一郎がメモを手に握らせて、ここに行けば今の給料位の月給で雇ってもらえるから行ってみろと言った。

メモには東京の台東区の会社の名前と住所が書いてあった。

そしてメモと一緒に“部屋を借りるのにもお金がいるだろう。これを持っていけ”と言って30万入った袋を翔に握らせた。

「ありがとうございます。必ず返します」

そう言って翔は深々と頭を下げて果樹園と智子の前から去ったのだった。

2人の初恋はさよの悪意のせいで儚く砕け散ったのだ。
< 35 / 52 >

この作品をシェア

pagetop