棘ある花も愛されたい
そして時間を気にしながらそわそわ過ごす17時ちょっと過ぎ。
あともう少し···―――そう思っている時だった。
―――ピンポーン
家のインターホンが鳴った。
禅さんとの約束の時間までは、まだ20分程早い。
しかし、普段わたしの自宅に来客が来る事は無いに等しい為、来るのは禅さんしか考えられなかった。
わたしは足早に玄関へ向かうと、玄関の扉のドアノブに手を掛け、ゆっくりと扉を開けた。
すると、開いた扉の隙間から顔を覗かせたのは、髪の毛や肩に粉雪を乗せた禅さんだった。
「ちょっと早いけど、来ちゃった!」
そんな乙女な言葉選びをして微笑む禅さんの息は白く、外の寒さを物語っていた。
わたしは「仕事早く終わったんですか?」と言い、扉を広く開け、禅さんを玄関の中に入れる。
禅さんは肩の雪を払いながら、「早く紗和ちゃんに会いたくて、パパっと終わらせてきたんだよ!」と言った。
―――早く紗和ちゃんに会いたくて···
その言葉に照れてしまうわたしは、照れ隠しで表情を無にしてしまう。
それからわたしは「今、出掛ける準備して来ます。」と言うと、リビングへ戻り、ダウンジャケットを羽織り、マフラーを巻き、いつものトートバッグを手に持って、最後にストーブの電源を消してから、禅さんが待つ玄関へと急いだ。
「お待たせしました。」
「全然待ってないよ。逆に早く来ちゃってごめんね。」
そう言って笑う禅さんは、「じゃあ、行こうか!」と言い、玄関の扉を開けた。
そして、開いた扉のその先に見えたのは、真っ白な花びらのような粉雪が舞う光景だった。
わたしは「うわぁ、雪。」と呟きながら外へ出ると、扉を閉め、鍵を掛けた。
「今日、こんなに雪が降るなんてね。」
「また積もりそうですね。」
そんな会話をしながら、わたしたちはアパートの階段を下りて行く。
それから出逢った公園がある方向へ歩き出し、まずは近所にあるスーパーへと向かった。
わたしの自宅から徒歩10分先にあるスーパーは、ドラッグストアが隣接している割と便利なスーパーだ。
カートに籠を乗せ、カートを押す禅さんの隣をわたしが歩く。
こうして一緒に歩いていると、端から見れば恋人同士に見えたりするんだろうか。
そんな事を一人考え、照れてしまう自分が馬鹿らしく感じる。
すると禅さんは辺りを見渡しながら、「今日は何作るの?」と訊いてきた。
「今日は、豚汁と焼き鮭に玉子焼きです。」
「おぉ〜!豪華だね!」
「何か朝ご飯みたいなメニューですけど···」
「いやいや!コンビニ弁当ばかりの俺からしたら、ご馳走だよ!」
献立を聞くだけで喜んでくれる禅さんに、わたしはホッとすると共に嬉しくなる。
禅さんに喜んでもらえる。
それだけでわたしの心は、温かくなるのだ。