棘ある花も愛されたい
それからわたしは人参や玉ねぎ、ゴボウなど、必要な食材を籠を入れていく。
食材を手にする度に「こっちの方が美味しそうじゃない?」とか、「それ良い色してるね!」とか、一緒に見ながら選んでくれる禅さんの言動は、わたしにとっては新鮮なものだった。
(諒祐と買い物に来ても、いつも横に居るだけで、選ぶのはわたし一人だったなぁ。)
そんな風にまた禅さんと諒祐を比べてしまっている自分に気付き、わたしは頭の中に浮かんだ事を掻き消そうと軽く頭を振った。
そして会計を済ませようとレジへ並ぶと、禅さんはスッと前に出てスマートに会計を済ませてしまう。
わたしは財布を片手に「あっ···」と言葉を漏らし、クレジットカードで決済する禅さんを見上げた。
「わたしが払おうかと思ってたのに······」
愚痴を溢すかのようにわたしがそう呟くと、禅さんはニコリと笑いながら「こういうのは、男が払うものでしょ?」と言う。
わたしが会計をしようとしたのも、いつもの癖だ。
諒祐との買い物でいつも会計を済ませていたのは、わたしの方だったから。
それから買い物を済ませて外へ出ると、雪はまた降り続いており、地面には先程の足跡を隠すように雪が積もっていた。
荷物がレジ袋2つ分になってしまい、片方をわたしが持っていると、その横に来た禅さんが当たり前のようにわたしの持つ荷物も持ってくれる。
わたしは「えっ、わたしも持ちますよ。」と言ったのだが、禅さんは当然のような顔をして「レディーに荷物なんて持たせられないよ。」と言った。
「それに外は寒いから、荷物を持ってたら手が冷たくなっちゃうよ?」
何気無い禅さんの優しい言葉に、わたしの心がキュッと掴まれたような感覚になる。
今まで必死に生きていく為に尖らせてきた棘という強がりが、禅さんによって剥がされていくような気分だった。
「俺んち、すぐそこだから。」
そう言って歩き出す禅さんに続き、わたしも歩き出す。
粉雪が舞う中で重たい荷物を持ち、軽快に歩く禅さんの横顔は絵に描いたように美しく、ついわたしは禅さんを密かに盗み見てしまっていた。
わたしはダウンジャケットのポケットに手を忍ばせながら、禅さんの横を歩き、その表情が見つからないように口元をマフラーで隠す。
そしてスーパーを出て歩き出す事、約5分。
禅さんがある一軒の家の前で立ち止まった。
「ここだよ。」
そう言って禅さんが入ろうとする家は、レトロな雰囲気が漂う縁側があるような大きな一軒家だった。