棘ある花も愛されたい
「一軒家、ですか?」
二階建ての禅さんのご自宅を見上げ、わたしは言う。
禅さんは玄関の扉に鍵を差し込み、鍵を解錠させながら「うん、一人で住むには大き過ぎるんだけどね。」と言った。
「どうぞ、我が家へ。」
そう言いながら、禅さんは玄関の扉を開けた。
入口に掛かる"日置"の表札は年季が入っており、扉も玄関口も昭和の香りがする昔ながらの一軒家という雰囲気だ。
「お邪魔します。」
そう言って、玄関内に一歩足を踏み入れると、何処か懐かしい匂いがした。
「いやぁ、雪凄かったね。」
そう言いながら、禅さんは一度荷物を玄関マットの上に置くと、わたしの頭や肩に乗っかる雪を手でほろってくれた。
禅さんの手が触れる度に少しドキッとしてしまう。
それから禅さんは「うん、雪ほろえたよ!」と言うと、自分の肩についた雪も払い落とし、ハイカットのダークブラウンの冬靴を脱いで家に上がった。
玄関を入ってすぐ目の前には、2階へ続く階段が伸びており、その左側には扉の開いた部屋があって、禅さんは荷物を持ちながらその部屋へと足を進めて行った。
わたしもムートンブーツを脱ぎ、玄関の脇に揃えて置くと、再び「お邪魔します。」と呟きながら、禅さんの後について行く。
禅さんが入って行った部屋は広いリビングで、木目が特徴的なフローリングにペルシャ絨毯のようなビンテージラグが敷かれており、その上にはモスグリーンのフカフカのソファーと深いブラウンのテーブルが置かれていた。
リビングの横には、横開きの引き戸があり、その向こう側にはダイニングスペースに置かれた食卓テーブルとキッチンが見える。
リビングとダイニングの間には、ブルーフレームの丸い石油ストーブが置いてあり、見るからレトロでお洒落なストーブだ。
禅さんはキッチンへ荷物を運んでから一度こちらへ戻って来ると、コートを脱ぎ、「ふぅ。」と一息つく。
「少し休憩してから、夕飯作ろうか。」
そう言い、脱いだコートをソファーの背に掛ける禅さんは、「何か温かいものでも飲もう。紗和ちゃんは、珈琲とお茶、どっちがいい?」と言って、着ているパーカーの腕捲くりをした。
「じゃあ···、お茶で。」
ダウンジャケットを脱ぎながらわたしがそう言うと、禅さんは「ほうじ茶派?緑茶派?」と訊く。
「それは禅さんにお任せします。」
「おっけ!じゃあ、緑茶にしようかな!」
「わたしもお手伝いしましょうか?」
脱いだダウンジャケットを抱きながら、わたしがそう言うと、禅さんは「お客さんは座ってて!って言っても、あとでご飯作ってもらっちゃうんだけどね〜。」と言いながら「いししっ!」と笑い、キッチンへと入って行った。