棘ある花も愛されたい
「あ、気を使っていただかなくても、わたしは、大丈夫なので···」
恥ずかし紛れにわたしがそう言うと、禅さんはキョトンとしながら「別に気なんて使ってないからね?」と言った。
そして、禅さんは少し黙った後、真面目な雰囲気を漂わせ、こう言ったのだ。
「それに、もし、もし仮に、紗和ちゃんに棘があったとしても···、俺は···、紗和ちゃんの棘になら、刺さってもいい。」
―――俺は···、紗和ちゃんの棘になら、刺さってもいい
その言葉にわたしは動揺すると、手を滑らせ切っていた玉ねぎを落としてしまう。
「あっ!あぁっ!」
自分でも呆れてしまう程の動揺に、わたしは慌ててしゃがみ込み玉ねぎを拾う。
禅さんは「あっ、大丈夫?!」と言い、一緒にしゃがんで玉ねぎを拾おうとしてくれた。
その時、禅さんとわたしの手が触れ合った。
「あっ···!」
そうして目が合ったわたしたちの距離は近く、更に動揺が増してしまう。
わたしは今、どんな顔をしているのだろう。
そう思うと焦って、わたしは咄嗟に顔を背けてしまった。
「あっ、ごめん!」
そう言い、禅さんは慌てて手を避ける。
わたしの今の行動で、禅さんに誤解を招いてしまっただろうか。
別に、禅さんの手が触れて、嫌だったわけではない。
ただ恥ずかしくて、どうしたら良いのか分からなくなっただけなのだ。
その時、ふと先程の禅さんの言葉を思い出した。
―――女性というものがこわくなったんだ
(···わたしは、嫌な思いをさせてしまった?禅さんは、わたしをこわくないと言ってくれたのに―――)
そう思った瞬間、わたしはふと禅さんの方に顔を向き直らせていた。
「···謝らないでください。わたしは、別に···嫌だったわけじゃなくて、そのぉ、ただ···恥ずかしくて······」
わたしがそう言い、しどろもどろになっていると、禅さんはそんなわたしの姿を見て優しく微笑んだ。
「やっぱり···、紗和ちゃんは可愛いよ。」
禅さんはそう言って、落としてしまった玉ねぎを全て拾い上げると、玉ねぎをザルに入れ、洗い流してくれた。
わたしはそんな禅さんの優しさに救われ、顔が火照った状態で料理を続け、そんなわたしの隣で禅さんは最後までわたしが料理をする姿を見守っていた。