棘ある花も愛されたい

それから、豚汁が出来上がり、焼き鮭も甘い玉子焼きも出来た頃にご飯の炊き上がりを知らせる音が鳴る。
禅さんは出来上がった料理を食卓テーブルへ並べていき、わたしは茶碗にご飯を盛る。

そして、わたしたちは冷たい麦茶と共に朝食のような夕飯が並ぶ食卓へとついた。

「それじゃあ、戴きます。」
「戴きます。」

手を合わせそう言い、まず禅さんが手を付けたのは豚汁だ。
わたしは麦茶が入ったグラスに手を伸ばしながら、禅さんの反応を窺う。

禅さんは少し息を吹き掛け冷まそうとした豚汁にそっと口をつけ、それからひっそりと口元を緩めていた。

「美味いっ。」

そう言って、具沢山にした豚汁を食べていく禅さんの姿にわたしはホッと安堵した。

「良かった。」
「めちゃくちゃ美味しいよ!」

そう言う禅さんは、次に甘くした玉子焼きを一切れ箸で摘み、一口で頬張っていた。

「この玉子焼きやばっ!めちゃくちゃ好き!」
「本当ですか?それなら良かった。」
「いや、本当!お世辞とかじゃないからね?」

禅さんの反応を見て安心したわたしは、やっと自分の食事を始める。
喜んでもらいたいと思いながら作り、禅さんなら喜んでくれると信じてはいたが、やはり実際にその姿を見ると、安堵すると共に心躍るものがあった。

「わたしが作る玉子焼きは甘めなので、少し心配してたんです。人によって好みが分かれますからね。」
「俺は、紗和ちゃんの玉子焼き好きだよ!」
「ありがとうございます。こんなに喜んでもらえるのは初めてなので···、嬉しいです。」

わたしがそう言い豚汁を飲むと、禅さんはキョトンとしながら「えっ、初めて?」と言った。

「あ、そんな色んな人に作った事があるわけじゃないですけど···、彼は、好きじゃなかったみたいなので······」

咄嗟に"色んな人に作っているわけではない"事を伝えたかっただけのはずが、ふと諒祐の事を口に出してしまう。

すると禅さんは、少しムッとしたような雰囲気を漂わせながら「えっ?こんなに美味しいのに?」と言った。

「好みは、人それぞれですからね。」
「でも、作ってもらったら、まず感謝でしょ?それなのに、好きじゃないって···」

禅さんはそう言いながら宙を仰ぎ、それから「こんな美味しい料理を作ってもらえて、紗和ちゃんに想ってもらえる、その彼が羨ましいよ。」と呟くように言っていた。

「···でも、もう、彼じゃないです。帰りを待つのはやめました。だから、もう過去の人ですね。」

わたしはそう言い、豚汁に入っている大根を箸でつかみ、口へと運ぶ。
そんなわたしの言葉を聞いた禅さんは、「そうなの?大丈夫?」と、わたしの気持ちを心配してくれた。
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