傷ついた王子は森の魔女に癒される
 つぶやいたリリアナの目が見る間に潤んでいく。涙が一粒、頬を伝い落ちていく。
 ファリエルはたまらずリリアナに手を差し伸べるとその両手を取り上げた。
 冷えきった手に熱を与えるように、ぎゅっと握りしめる。手首には、ユリ模様のお守りが着けられていた。

 途端に揺れ出したアクアブルーの瞳をじっと覗き込む。

「リリアナ。僕を救ってくれて、僕を癒してくれて、本当にありがとう。君と過ごした日々は、これまで生きてきた中で一番幸せな時間だった。君への恩を仇で返す選択をしてしまい、本当に申し訳ない」

 ファリエルが思いを伝える間、リリアナはファリエルを見上げて固まっていたものの――少しずつ視線を落としていった。

    ***

 リリアナは、切実なファリエルの言葉を受け止める一方で動揺していた。
 ファリエルに手を握られた瞬間、ファリエルの飲んだ薬の効果を魔力で感知したからだ。
 薬には、ファリエルの説明よりもずっと高度で複雑(・・)な効能が付与されていた。


 ファリエルさんは、記憶が消える薬って言ってたけど、違う。それだけじゃない。
 記憶消去と、もうひとつ。

 生命エネルギーの増大?
 ジャーヴィスさんが飲んだ薬みたいに、寿命を延ばす効果が付与されてるの?


 目を閉じて、さらに魔力の流れを辿る。
 薬の発動条件は、青い炎が消えることだけじゃない。


 『炎が燃え尽きる前に、自ら愛を示すべし』――。


 自ら(・・)愛を示す(・・・・)!?
 それに、私がこれを伝えたら無効化されちゃうようになってる……!

 リリアナは唇を噛み締めると、必死にファリエルを見つめた。


 お願いファリエルさん、どうか気づいて――!
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