傷ついた王子は森の魔女に癒される
「きっと昨日いらしたときに、仕掛けていったのかもしれませんね」
「魔法でこんなこともできるのだな」
「あの人くらいですよ、こんなに長い時間差を付けて魔法を発動させられるの。本当にすごいんです、コーデリアさんって」

 張りきった顔をして熱弁する。
 その表情がたまらなく可愛くて、ファリエルは思わずリリアナの頭を撫でてしまった。
 たちまちリリアナがくすぐったそうに肩をすくめ、照れくさそうに笑う。その顔は、きらめく朝日とバラに飾られて、ひときわ輝いて見えた。


 スープにもティーカップにも花びらの山ができてしまい、とても食事を続けるどころではなくなってしまった。それでも心は今までに味わったことのない温かさに満ちていた。

「リリアナ。近いうちに、二人でコーデリア嬢に会いに行かないか? 昨日はお礼を伝えそびれてしまったから」
「そうですね。一緒に行きましょう」
「ああ。これからは、どこへ行くのにも二人一緒だ」
「はい!」

 色とりどりのバラに飾られたリリアナが、大きくうなずいた。


 ――処刑台から思いがけず未来に連れ出してもらえた僕が、さらに未来へと歩いて行ける。誰よりも大切な人と共に。


 魔女の森の空気を胸いっぱいに吸い込む。
 ファリエルは、受け止めきれない幸せに浸りながら、そっと目を閉じた。

〈了〉

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