傷ついた王子は森の魔女に癒される
「……?」

 どうしたんだ?と――聞くまでもなかった。
 頬が赤らんでいた。アクアブルーの目はまん丸になっている。
 視線をそらしたまま、小声で問いかけてくる。

「あ、あのっ。目、閉じててもいいですか……?」
「ああ、君のやりやすいようにしてくれて構わない」
「本当にすみません、自分でやるって言ったくせに手を止めちゃって。……拭かせてもらいますね……」

 目をぎゅっと閉じて、再び拭き始める。『うう……』と弱々しい声を出す。
 本で読むのと実際に触れるのとでは、きっと大違いだろう。
 生身の男の身体に触れて動揺し、直視できなくなったのかもしれない。

 肌を拭く動きは、どこかおっかなびっくりといった様子だった。
 くすぐったさに声が出そうになり、ファリエルは唇を引き締めた。


 身体を拭かれる中、まぶたを下ろしたままのリリアナの顔をじっと見つめる。
 化粧をしていない女性の顔を見る機会は今までになかった。
 リリアナの、なにも塗られていない肌の綺麗さに驚かされる。

 緊張した表情を、ぼんやりと眺める。
 ふと、記憶の底から浮かび上がるものがあった。

 誰かに似ている気がする。一体誰に似ているんだろう――。


「っ――!」


 ある人の面影がよぎった。その瞬間。
 どくんと心臓が跳ねた。


 似ている。
 あの日(・・・)出会った魔女に(・・・・・・・)――。
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