傷ついた王子は森の魔女に癒される
「もう精霊召喚というものはしないのか? 普段から召喚をしているわけではないのか?」
「あ、はい。たくさん魔力が必要なので、滅多にできないんです」
「それは……。貴重な機会を奪ってしまって申し訳ない」
「いえ! 私が間違えちゃっただけなので気にしないでください!」

 アクアブルーの目を見開いたリリアナが、開いた両手を小さく左右に振る。
 幼げな仕草に、胸の真ん中がきゅっとなる。
 今のは一体――? 息苦しいような感覚に、ひとつ咳払いしてから話を続ける。

「精霊を呼び出したかったのは、なにか理由があったんだろう?」
「はい。魔女って精霊に薬作りを手伝ってもらうことがありまして。精霊に力を貸してもらうと、自分だけでは作れない薬を作れるようになるんです」
「そうか……。本当にすまないことをした」
「ファリエルさんはなにも悪くないですよ! 実は私、精霊召喚しようとしたの初めてだったんです。最初から成功させられる人はそんなにいないって言われてますし、気にしないでくださいね!」
「……ありがとう」


 テーブルクロスを掛けるのも手伝って、椅子を置いて。
 改めて室内を見回す。テーブルもベッドも、薬作りをする机も、今いる一室にまとめられていた。

 どこか見覚えがあるような気がする――。
 それ以上思い出すことを、心が拒絶する。
 ファリエルはそっと深呼吸すると、心の中で自分に言い聞かせた。

 きっと魔女は、誰でも似たような家に住むものなのだろう。そうに違いない――。
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