傷ついた王子は森の魔女に癒される
 ふと、足音が聞こえてきて我に返る。
 リリアナが、心ここにあらずといった表情をして歩き出していた。
 その先には本や調剤道具が散乱した机。薬作りを始めようとしているのだろうか。
 引き止めることを申し訳なく思いながらも再び問いかける。

「リリアナ。他に手伝えることはあるだろうか」

 ぴたりと足を止めたリリアナが、ミルクティー色の髪をなびかせながら振り返った。

「そうですね……。そしたら、裏の畑にお水を撒いてもらえますか? ご案内しますね」

 台所に入ったリリアナが、じょうろに水を入れる。続けてそばに置いてあった小瓶の中身を垂らす。
 ファリエルはじょうろを受け取ると、黒いローブをなびかせる後ろ姿を見ながら家を出た。


 久しぶりの屋外。木漏れ日の眩しさに目を細める。
 辺り一面、森に囲まれていた。緑と土の匂いをそっと吸い込む。
 振り向いて、家を見上げる。古びた建物の外観もまた、室内と同様に見覚えがあるような気がした。
 首を振ってその考えを打ち消す。内装が似ているのだから、建物の形が似てしまうのも当然だ――。


 家の裏には小さな畑があった。形の違う芽だけがぽつぽつと並んでいる。
 くるりと振り返ったリリアナが、畑を指しながら説明を始めた。
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