傷ついた王子は森の魔女に癒される
 とはいえ双葉にはなんの変化もない。
 魔法の光の粒はきらめき続けている。

 育つまで、もう少し水を掛けた方がいいのだろうか?
 顎に手を添えた、その瞬間。


 ぼんっ!

 と突然、目の前に巨大なキャベツが出現した。
 異様な大きさのそれに押しのけられて尻もちをつく。

「こ、これは一体……!?」

 畑全体を覆うほどのサイズになったキャベツをぽかんと見上げる。
 その直後、リリアナが戻ってきた。

「あら、お水、掛けすぎちゃいました?」
「すまない。そのようだ」

 王子として過ごしていたときは、あからさまな失敗というものをしたことがなかった。
 簡単な頼みごとすら遂行できない情けなさに落ち込んでしまう。
 立ち上がって土ぼこりを払い、もう一度謝ろうとした矢先。

 リリアナがにっこりと笑った。

「大丈夫ですよ! 私も小さい頃、よく水や薬の分量を間違えて育てすぎちゃってましたから! 子供の頃は、このサイズだと収穫するのが大変だったなあ……。懐かしいな」

 巨大キャベツをぽんぽんと叩きながら、目を細める。
 過去に思いを馳せる横顔に、つい見とれてしまう。ファリエルは、幼いリリアナが大きなキャベツを見上げる姿を思い浮かべた。

 その途端、なぜか心臓がどくどくと騒ぎ始めた。

「……?」

 不可解な自分の反応を不思議がりながら、隣に立つリリアナに意識を向ける。
 どうしてこんなにも、胸がざわめくんだろう――。
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