傷ついた王子は森の魔女に癒される

5 魔女の野菜の育て方(後編)

 ファリエルは、無意識のうちにリリアナをじっと見つめてしまっていた。
 ふと振り向いたリリアナと視線がぶつかる。途端にアクアブルーの目が見開かれた。

「あっあの、ファリエルさん。本当に大丈夫ですから。気に病まないでくださいね」

 と早口で言って、ぱっと顔を逸らす。見る間に頬が赤らんでいく。
 その反応でファリエルは、自分がリリアナの顔に見入っていたことに気がついた。
 いつの間にか無礼なことをしていた自分に戸惑いながら、話を目の前のキャベツに戻す。

「それにしても、これを収穫するとなると骨が折れそうだな」
「そうなんですよね。なので、外側から一枚ずつ食べていこうかと」
「なるほど、それなら丸ごと収穫しなくて済むのか。でも味はどうなんだ? 変わってしまうのか?」
「多少は大味になっちゃいますけどね。でもまずくて食べられないってほどじゃないんで大丈夫ですよ! ただ……」
「……ただ?」

 ふと視線を落としたリリアナの表情を見て、緊張感が走る。
 黙って次の言葉を待つ。すると、リリアナが両手をぎゅっと握って気合いを入れるポーズをした。

「一枚でも大きいので、今日はキャベツ料理をたくさん作らなくちゃですね! いっぱい食べてくださいね!」
「ああ! もちろんだ。楽しみにしている」

 深刻な事態にならなくてよかった――。内心ほっとしながら、リリアナと力を合わせて巨大キャベツの葉を慎重に剥ぎ取っていく。
 一枚だけでも傘のような大きさのそれを、ふたりがかりで室内に運び込んだ。


 なまっている身体は、それだけで疲れを感じてしまう。
 でも自分のせいで余分に調理させることを思えば、任せきりにするわけにはいかない。
 料理の経験は数えるほどしかない。野営訓練で学んだことは、役立つだろうか――手伝いを申し出ようとした矢先。

 リリアナの方から先に話しかけてきた。
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