傷ついた王子は森の魔女に癒される
「どうですか……? お口に合いますか?」

 口の中のものを急いで飲み込んでから、何度もうなずいてみせる。

「ああ! もちろんだ。料理が上手なんだな君は。こんなにおいしいキャベツ料理は食べたことがない」
「わわ……ありがとうございます」

 ファリエルがちらっとテーブルの向こうを見ると、リリアナの顔がほんのり色づいていた。口元を綻ばせている。
 うれしいのはこちらの方なのに――。そう思いながら、ファリエルはリリアナの手料理を食べ進めていった。

    ***

 リリアナは、自分の料理が喜んでもらえたことにほっとしていた。
 目だけを上げて、様子をうかがう。ファリエルは、一度会話して以降はずっと、無言で食べ続けている。
 料理を口に入れた瞬間の、目を細めた顔。思いも寄らないその表情に、感動が込み上げてくる。

(自分の料理を誰かに食べてもらえて喜んでもらえるのって、こんなにうれしいものなんだ)

 ふと、先輩魔女の顔が思い浮かぶ。
『私の焼いたクッキー、おいしそうに食べてくれたの。嫌がるかと思ったのに』――。
 人間の恋人ができたあの人の、はにかんだ笑顔。
 理由は教えてもらっていないけど、長続きしなかったとは聞いている。

 自分に魔法を掛けてまで、心を閉ざして。
 そこまでしないと耐えられないくらいのことだったんだって、当時は驚いたけど。


 今でもずっと、その人を忘れられない気持ち、今ならわかる気がする――。
< 22 / 41 >

この作品をシェア

pagetop