傷ついた王子は森の魔女に癒される
 気まずさを覚えずにはいられない。王子として過ごしていた頃は、自分の心情を読み取られないようにするのが常だった。

 額を拭われる感触に、まばたきを繰り返す。ちらっと目だけで様子を窺う。
 リリアナは、安心させるような笑みを浮かべていた。


 汗を拭き終えたリリアナが、さらに顔を綻ばせる。

「安眠できるお薬、作りますね。ぐっすり眠れるようになりますよ」
「……ありがとう」

 きっと他の作業をしていただろうに、中断させてしまったことが申し訳ない。
 その上、さらに手間を掛けさせていいはずがない。
 せめてなにかしら役に立てたらとは思うけれど、素人が薬作りの手伝いを申し出るのも失礼だ。それなら――。

「リリアナ。君が薬を調合するところを見学させてもらっても構わないだろうか」
「えっ!」

 アクアブルーの目が見開かれる。白い頬が、ぽっと赤らむ。

「見てて楽しいものじゃないと思いますけど……」
「そんなことはない。調薬をする様子を見たことがないから一度見てみたいのだが」

 ベッドの上に身体を起こし、改めてリリアナをじっと見る。
 途端にうつむいたリリアナが、ミルクティー色の髪で顔を隠した。

「わ、わかりました。お席、用意しますね」

 リリアナは小走りでテーブルに向かうと、机の横にわざわざ席を用意してくれた。



 照れた様子のリリアナだったが、薬作りを始めた途端に顔つきが変わった。
 横顔の凛々しさに、思わず目を奪われる。

 色付きの液体の入った瓶を取り上げて、空の瓶に注いでいく。別の小瓶を取り上げて、色の違う液体を垂らし、金属製の棒を使って慣れた手つきで掻きまぜていく。
 目の高さまで瓶を持ち上げて、中身を見つめる。
 そしてまた、もう一方の小瓶を慎重に傾けて、一滴、二滴と足していく。


 リリアナの顔を眺めながら、心の中でつぶやく。
 やはりどこか、先日出会った魔女と似ている。
 もしかしたら血縁なのか? 魔女は子孫を残すものなのだろうか。
 でもずっとひとりで生きているように見えるのに、相手は一体――。
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