傷ついた王子は森の魔女に癒される

7 魔女と過ごす夜(2)

 顔を赤く染めて固まったリリアナが、おずおずと話し始める。

「えっと、あの、その……そんなに見つめられると、恥ずかしいというかなんというか……」
「……あ」

 心の中でつぶやいている間、すがるようにリリアナを目で追ってしまっていた。
 無礼なことをした自分に呆れながら、軽く頭を下げてみせる。

「凝視してしまってすまない。手慣れた様子に思わず見とれてしまった」

 尊敬する気持ちを笑顔にしてみせる。

「リリアナ。とても優秀な魔女なのだな、君は」
「ほえっ!? ――きゃっ!?」

 ぼんっ!という破裂音と共に、瓶から煙が噴き出した。
 素早く顔の前に腕を構えて煙をよける。視界が灰色に包まれる。

「リリアナ! 大丈夫か!?」
「は、はいっ! ちょっとびっくりしちゃったというか……! 魔力を込めすぎちゃったみたいです。お騒がせしちゃってすみません……!」


 煙が晴れていく。リリアナは、あたふたと煙を手で払っていた。
 顔は赤いままで、目をぎゅっと閉じている。

 ――こんなに驚くとは思わなかった。褒められ慣れてないのだろうか。
 胸の中でつぶやいた途端、数年前の苦い記憶がよみがえった。

(そういえば昔、令嬢たちに微笑みかけただけで、何人か卒倒してしまったことがあったな……)

 その後しばらく城内の語り草となってしまった、『ファリエル王子の魔性の微笑み事件』。
 あれ以降、人前で笑わないようにしていた。

 自然に微笑むことができたのは久しぶりかもしれない。
 自分の意外な行動に、今さら恥ずかしくなってきた。口元を手で隠す。
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