傷ついた王子は森の魔女に癒される
「こういうの、懐かしいな……」

 ファリエルがリリアナの隣に座った途端、リリアナがぽつりと言った。

「私の先輩も、こうして一晩中そばにいてくれたことがあったんですよ。あのときは確か……手がしびれて動かなくなったんでした」
「それは災難だったな。薬作りはそんなにも難しいものなのだな」
「作業自体は難しくはないんです。でも私みたいに未熟だと、動揺したりだとか落ち込んでたりとか、逆に喜びすぎてるときとか。心の状態が反映されちゃうんですよね」
「なるほどな。それでさっき、暴発してしまったのだな」
「はい……。お騒がせしちゃってすみません」
「気にするな。それにしても、魔女同士で交流があるものなのだな」
「あ、はい。子供の頃は特に、どの先輩たちも気にしてくれてましたね」

 アクアブルーの瞳を覗き込む。見えていないせいか、まっすぐに見つめ返してもらえない。リリアナの目に自分が映らないことを、少し寂しく感じた。
 ――こういう気持ちを久しぶりに感じた気がする。王城にいたときは、常に心を強く保っていなければならなかった。すぐに悪意に飲まれてしまうから。

 ファリエルが密かに沈んだ気持ちになった横で、リリアナの思い出話が続く。
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