傷ついた王子は森の魔女に癒される

9 魔女と過ごす夜(4)

 外から鳥の鳴き声が聞こえてくる。窓の外が明るくなり始めている。
 ファリエルは結局、一睡もできなかった。

「ん……」

 小さな声が聞こえた瞬間、肩に感じていた重みと体温が離れていった。

「あれ、もしかして寄りかかっちゃってましたか……? すみません……」

 姿勢を戻したリリアナは、まだ目覚めきっていないのか、ぼんやりとしていた。
 眠そうな顔に、つい頬がゆるんでしまう。

「おはよう、リリアナ。目の調子はどうだ?」
「あ、はい、すっかり見えるようになりました! ありがとうございました!」

 ぱっと目を開いたリリアナは、素早く立ち上がってくるりと振り返ると、ファリエルに向かってぺこりと頭を下げた。


 部屋を出ていったリリアナの足音が遠ざかっていく。
 その音を聞きながら、ファリエルは、ぱたりとベッドに倒れ込んだ。
 夜じゅうずっと眺めていた無防備な表情が、頭から離れない。

「寝顔、かわいかったな……。って、なにを言ってるんだ僕は……!」

 自分のつぶやきに驚いて、素早く口を押さえる。
 ここまで自分の心をコントロールできていない状態は初めてな気がする。
 このままではまずい――。
 
 ファリエルは、がばっとベッドから起き上がると部屋を飛び出した。
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