傷ついた王子は森の魔女に癒される
 リリアナに招き入れられた男が、巨大なリュックサックを下ろしながら豪快に笑い出す。

「あっはっはっは! まさか魔女の家に客人がいるとは。悪かったなあ、いきなり襲いかかったりして」
「いや、こちらこそ敵意を向けてしまってすまない」
「気にすんなって。そもそもリリアナがあんたになにも教えてないのが悪いんだよ」
「あっ……そうですよね。ファリエルさん、前もってお伝えしてなくて本当にすみませんでした」

 テーブルの上に薬瓶を並べていたリリアナが手を止め、ファリエルの方を向いてぺこぺこと頭を下げる。
 ファリエルは、縮こまったリリアナに小さく首を振ってみせると、安心させるように微笑んでみせた。

「気に病まなくていい。君に危害が及ばなくてなによりだ」
「あ、ありがとう、ございます」

 ぽっと頬が赤らむ。
 リリアナが深くうつむき、ミルクティー色の髪で顔を隠した。

 部屋が静まり返る。

 直後、軽く肩をすくめた男が、ぷっと噴き出した。

「おーいリリアナ、なにふたりの世界に入り込んでんだよ。俺の紹介をしてくれよ」
「え!? あ、そっか、すみません!」

 リリアナはあたふたと顔を上げると、ファリエルを見ながら手のひらを上にした手で男を指し示した。

「ご紹介が遅れてすみません。こちらの方は、魔女の御用聞きをしてくださっている、行商人のジャーヴィスさんです」
「ジャーヴィス殿。お初にお目に掛かる。僕はファリエルという。よろしく」

 胸に手を添えて軽く頭を下げる。
 男と視線を合わせる。すると男は少しだけ目を見開いてファリエルを見ていた。
 その表情に、危機感を覚える。


 しまった。王子と気づかれただろうか――?
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