傷ついた王子は森の魔女に癒される
 年齢の話はそれきりになり、リリアナとジャーヴィスが別の話を始めた。
 最近の薬のニーズだったり、どの薬草が近年豊作で、逆にどれが希少になってきたとか。
 耳慣れない薬草の名が次々と出てくる。リリアナは「もうこの値段じゃ作れないな……」とか「別の素材に切り替えてみようかな」などと、真剣な顔をして紙にペンを走らせていた。

 付き合いが長いのだろう、ふたりの間には、男女にもかかわらずどこか親友めいた雰囲気が漂っていた。
 ふと胸に違和感を覚えて、そっと息を吸い込み、吐き出してみる。
 今までに感じたことのないもやもや感は、いくら深呼吸を繰り返しても晴れなかった。


 会話を弾ませるふたりの声を聞きながら、考えを巡らせる。
 国々を渡り歩いているであろうこの行商人なら、祖国がどうなったか当然知っているはずだ。
 でもそれを尋ねたら――もし王国が由々しき事態を迎えているとしたら――王子として国を捨て置くわけにはいかない。リリアナのところに留まっている場合ではなくなる。


 僕は、ボナマハト王国の第二王子だ。国民を見捨てる選択肢など決して選ばない。
 処刑台から見た光景を思い出す。僕を殺せと叫んでいた人々であっても、王位継承権を持つ者の義務として、国民のために生きなければならない。

 リリアナを見る。彼女は僕を召喚してしまった責任を感じてここに留め置いてくれているのだろう。彼女に世話になりっぱなしでいいはずがない。
 それでも。


 ここから去れば、もう二度とリリアナに会えない気がする――。
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