傷ついた王子は森の魔女に癒される

12 魔女の恋愛事情

 リリアナと行商人ジャーヴィスの談笑は夕方まで続いた。
 次の魔女の家へと向かうという行商人を、リリアナが見送りに出る。

 ファリエルは、ひとりベッドに座り込み、ぼうっとしていた。
 結局、ジャーヴィスになにも尋ねられなかった。
 祖国は今どうなっているか――。
 尋ねるかどうかずっと迷い続けて、決断できなかった。


 室内に戻ってきたリリアナが、ファリエルを見て申し訳なさそうな顔をする。

「すみませんファリエルさん、すっかり話し込んじゃって」
「あ、ああ。気にするな」
「あの……もしかして、お体の調子、悪くなっちゃいましたか?」
「いや、そうではないのだが……。君はあの人とは付き合いが長いのか?」

 急いで口を押さえても、もう遅い。
 迷い続けた頭では、ふさぎこんでいる言い訳を思い付けなくて、考えるより先に言葉が出てしまった。

 リリアナは、ファリエルのいきなりの質問にもさらっと答えてくれた。

「あの人は、子供の頃からお世話になっている方です。かなり無茶な発注をしても必ず用意してくれますし、魔女の秘薬の販売先も厳選してくれているので、安心して商品を預けられるんです。本当に、まさに『魔女に尽くしてくれている』って感じで。あの人なしじゃ、魔女は生きられないくらいです」
「……」

 あの人なしじゃ生きられない――その言葉がやけに引っかかり、黙り込んでしまう。
 しんと部屋が静まり返る。

 なにかを言わなくては。
 焦ったファリエルは、さらに考えなしの言葉を発してしまった。
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