傷ついた王子は森の魔女に癒される
「魔女は、恋愛はしないのか?」
「え!? 恋愛、ですか……!? え、えーと。する人としない人がいますね」

 ぽっと顔を赤らめたリリアナが、細かくまばたきを繰り返す。
 もう今さら自分の発言は取り消せない。
 開き直ったファリエルは、失礼な質問だと自分で思いながらも、気になっていたことを尋ねることにした。

「君自身はどうなんだ?」
「えっ、私ですか!? 私は……子供の頃に一度だけ会ったことのある方を素敵だなと思ったことはありますよ。でもその方は、もう寿命でお亡くなりになってるはずです。ずっとずーっと昔のことですし」

 寂しげに目を細める。それでも口元は微笑んでいた。
 今話していた、素敵な人(・・・・)を思い出しているのかもしれない。

 きっといつまでも、その男のことが心に残っているのだろう。
 そう胸の内でつぶやいた途端、息が詰まった。

 そっと首を振って、自分の反応を否定する。
 リリアナが僕に優しくしてくれるのは、僕を召喚した責任を感じているからだ。


 僕に特別な思いを抱いているわけじゃない。決して――。


    ***


 久しぶりに外に出て身体を動かしたせいか、夕食を食べたあとは急激に眠くなった。
 うとうとしていたら、リリアナに『少し横になった方がいいかもしれませんね』と笑われてしまった。
 その後、どうにかベッドまでたどり着けたような気がするけれど、はっきりとは憶えていない。


 再び起きたときは、窓の外は真っ暗になっていた。
 リリアナの様子をうかがう。作業中に眠ってしまったらしい。
 机に突っ伏して、すうすうと寝息を洩らしている。
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