傷ついた王子は森の魔女に癒される
13 あと少しだけ
行商人が去ってから数日後。
ファリエルは、なまっていた身体を鍛え直そうと、早朝から剣代わりの枝を振っていた。
森のひんやりとした空気の中、仮想の相手を頭に描いて、その動きと競り合う。
朝日が眩しくなってきた頃には汗だくになり、息が上がってきた。
肩で息をしていると、リリアナが家から出てきた。
その手には、飲み物とタオルを持っている。
「ファリエルさんが元気になって、本当に良かったです」
「本当にありがとう、リリアナ。君のおかげだ」
汗を含んだ髪を掻き上げて、微笑んでみせる。
するとリリアナが、ぴたりと足を止めた。
ぽっと頬が赤くなる。
照れる様子にファリエルもまた照れくささを感じてしまう。
お互いぎくしゃくしながらカップとタオルの受け渡しをする。
水に口をつけた途端に喉の渇きに気づいて、一気に飲み干す。
冷たい水が、火照った身体を冷ましていった。
和やかな時間の中でも、すぐに心に影が射す。
身体は完全に回復した。
いつまでもこうしてリリアナの世話になっているわけにはいかない。
それでも、あと少し。
あと少しだけ――。
「……リリアナ。君になにか恩返しをさせてはもらえないだろうか」
「恩返しなんてそんな! 元はといえば私がファリエルさんを召喚しちゃったのが悪いんですし」
「悪いはずがない。君は僕の命の恩人なんだ。なにか僕が役に立てることはないか?」
自分でも必死だなと思いながらリリアナに畳みかける。
小首をかしげたリリアナが、視線を横に流す。
『うーん』とつぶやいてから、またファリエルを見た。
ファリエルは、なまっていた身体を鍛え直そうと、早朝から剣代わりの枝を振っていた。
森のひんやりとした空気の中、仮想の相手を頭に描いて、その動きと競り合う。
朝日が眩しくなってきた頃には汗だくになり、息が上がってきた。
肩で息をしていると、リリアナが家から出てきた。
その手には、飲み物とタオルを持っている。
「ファリエルさんが元気になって、本当に良かったです」
「本当にありがとう、リリアナ。君のおかげだ」
汗を含んだ髪を掻き上げて、微笑んでみせる。
するとリリアナが、ぴたりと足を止めた。
ぽっと頬が赤くなる。
照れる様子にファリエルもまた照れくささを感じてしまう。
お互いぎくしゃくしながらカップとタオルの受け渡しをする。
水に口をつけた途端に喉の渇きに気づいて、一気に飲み干す。
冷たい水が、火照った身体を冷ましていった。
和やかな時間の中でも、すぐに心に影が射す。
身体は完全に回復した。
いつまでもこうしてリリアナの世話になっているわけにはいかない。
それでも、あと少し。
あと少しだけ――。
「……リリアナ。君になにか恩返しをさせてはもらえないだろうか」
「恩返しなんてそんな! 元はといえば私がファリエルさんを召喚しちゃったのが悪いんですし」
「悪いはずがない。君は僕の命の恩人なんだ。なにか僕が役に立てることはないか?」
自分でも必死だなと思いながらリリアナに畳みかける。
小首をかしげたリリアナが、視線を横に流す。
『うーん』とつぶやいてから、またファリエルを見た。