傷ついた王子は森の魔女に癒される
「そしたらお言葉に甘えて……、薬の素材を集めてきてもらえたらありがたいなって」
「採集か。喜んで引き受けよう」
「採集……でもうれしいんですけど……。ちなみにファリエルさんって、戦うのはお得意なんですか?」

 いきなりの質問に、ファリエルは目を丸くしてしまった。
 自分で『得意だ』と豪語するのは気が引ける。
 でもこれまで兵士たちに混じって厳しい鍛錬を続けてきた自負はある。

「戦いの経験はある。役に立てそうか?」
「わ、ホントですか? そしたら魔物を狩って、魔石というものを集めて欲しいんです」
「魔石?」
「はい。魔物って、死ぬと身体が蒸発するみたいに消えるんですけど、魔物の生命力の源となってる石だけは消えずに残るんです」
「へえ、魔物とはそういう生き物だったのか……! 初めて知った」

 ほとんど見たことのない生き物の話に興味を覚えていると、リリアナがファリエルの顔をじっと見上げてきた。
 上目遣いの可愛らしさに息が詰まりそうになる。

「ちなみにファリエルさんって魔物を狩ったことはあるんですか?」
「……いや、ほとんど遭遇したことがないし、見かけたとしても撃退までだな」
「そっか。魔物って、ちょっと傷を負うとすぐ魔女の森に逃げ込んじゃいますもんね」
「ああ。深追いする理由もなかったし、とどめを刺すまで対峙し続けたことはないな」

 少なくとも、王国周辺に出没する魔物はそういう習性だった。
 そのため、国を挙げて対策を講じる必要もなかった。


 改めて、手に持った太い木の枝を眺める。
 魔物狩りは決定した。
 でも魔物を追い払うのではなく倒す(・・)なら、武器が必要だ。

「この家には、なにか武器はあるだろうか。僕は剣が一番得意だから、剣があるとありがたいのだが」
「剣はないです……すみません」
「そうか。どこかで調達できるだろうか。ジャーヴィス殿は、しばらく来ないのだよな」
「そうですね、いろんな魔女のところを巡ってらっしゃる方なので」

 リリアナが、地面に視線を落とす。
 まばたきが増える。アクアブルーの瞳が揺れる。
 なにかを迷っているらしい。


 君のためなら、なんだってしてみせる――。
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