傷ついた王子は森の魔女に癒される
 別の方向を向いたまま深呼吸して、急いで動揺を鎮める。
 誰かの前でここまでうろたえてしまったのは、もしかしたら初めてかもしれない。


 ファリエルが固まっている間に、リリアナがチェストから服を取り出して部屋を出ていく。
 しばらくして戻ってきたら、上下とも淡い色のシャツとズボンに着替えていた。さらに少年らしさが増している。
 
 肩に掛けた鞄の位置を直しながら「お待たせしました」と微笑む。
 準備が整ったようだ。

 ――今は僕は、女性騎士として振る舞わなければならないんだ。
 変装は、堂々としていないと疑われてしまうから。

 自分にそう言い聞かせて頭を切り替える。
 少年じみた風貌のリリアナが振り向く。

 ファリエルは、胸に手を当てて微笑んでみせた。

「……。では参りましょうか、リオルド様」
「わわっ。お、お世話になります、ファラさん」
「わたくしめに敬語はお使いになりませぬよう。わたくしは、あなた様の従者ですので」
「あ、そっか。えーと、じゃあ行こうか、ファラ」
「かしこまりました、リオルド様」

 耳まで赤くなったリリアナが、歯を見せて笑いながら歩き出す。
 ファリエルは、自分の動揺がばれなかったことにほっとしながら、リリアナに続いて家を出た。
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