傷ついた王子は森の魔女に癒される

15 魔女と見知らぬ街へ(前編)

 うっそうとした森を、リリアナに続いて歩く。
 見渡す限りの森は薄暗く、静けさが漂っている。

 木々を眺めながら歩いていたら、厚い苔のぬめりに足を取られそうになった。
 人前で転びそうになったのは、子供のとき以来だ。

 深い森は日差しが届かないせいで涼しく、いくらでも歩けそうな気がした。
 緑の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、リリアナの背中を追う。

 リリアナは慣れているのか、なんの目印もないのに、まるで道があるかのように迷いなく進んでいく。


 倒木に並んで座って水を飲んだり、携帯食料を食べたり。
 ときどき小休止を挟んで数時間。
 木漏れ日の角度が垂直に近くなってきたころになって、ふとリリアナが立ち止まった。
 なにもない前方に手をかざす。

「どうした?」
「森の外に誰もいないか確認してます」
「――!」

 辺りを見回してみる。
 相変わらず、視界いっぱいに森は続いている。
 森の外(・・・)が近いとは思えない。
 遠くに目を凝らしても、街道らしきものは見えない。


 しばらく静止していたリリアナが、目だけでファリエルを見た。

「森から出る手続きをします。いいですか?」
「……!」

 その言葉に胸がぎゅっと締め付けられた。
 魔法で細工が施されているとして。
 きっと、自分たちが立っているこの場所が森の端なのだろう。
< 53 / 117 >

この作品をシェア

pagetop