傷ついた王子は森の魔女に癒される
 リリアナと出会う前。
 魔女の定めた境界(・・)を行き来した直後の出来事が心を締め上げる。


 婚約者にねだられ、魔女に会いに行き。


 魔女の秘薬を持ち帰った結果、断罪された――。


 今思えば、婚約者のおねだりを聞いてあげると決めてからの展開があまりにも早すぎた。
 仕組まれたことだと気づけなかったのには理由がある。
 婚約者との会話中、違和感を確認しようとしただけで、すぐに泣き出されてしまったからだ。


 婚約者がよく泣くようになったのは、随分と前からだった気がする。
 長い間、僕をだますために、よくもあんな演技ができたものだ――。



 固く目を閉じて、渦巻く感情を抑え込む。

「――行こう、リリアナ」

 ファリエルはリリアナをまっすぐに見つめると、力強く頷いてみせた。



 リリアナが軽く手を振っただけで、目の前の景色ががらりと変わる。
 少し離れたところに街道が現れたのだ。

(こんなに近くに道があったのか……!?)

 魔女の魔法の強力さに驚かされる。
 だから人々は、魔女の姿を見たことがないんだ。

 一方で、疑問が湧いてくる。
 ならばどうやって、兄グンナールは魔女と知り合えたのか。
 なぜ、僕が魔女に会いに行ける手筈を整えられたのだろう。
 リリアナに聞けば、なにかヒントを得られるだろうか。

 でも、リリアナを僕の事情に巻き込みたくない――。
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