傷ついた王子は森の魔女に癒される
 胸の中で、疑問がふくれあがっていく。
 首を振って、考えるのをやめる。
 それを追求することは、この心安らぐ時間の終わりを意味するから。


 リリアナの元を去るべきなのはわかっている。


 だったら僕は、どこへ向かえばいいのだろう――。



 沈んだ気持ちで歩いていると、突然。
 女性の怒鳴り声が遠くから聞こえてきた。
 どうやらいたずらした子供を叱っているようだった。


「あんたねえ! そんないたずらばかりしてると魔女に(・・・)食われちまうよ(・・・・・・・)!」


「――!」

 ファリエルの隣で、リリアナがぴくりと肩を揺らす。
 声から逃れるように、そっとうつむいた。


 落ち込むリリアナにお構いなしで、叱り声が続く。

「魔女は人間だって、鍋で煮込んで毒薬の材料にしちまうんだから!」
「いやだあ、うわああん……!」

 子供が泣き出した。
 この世の終わりのような泣き声が、胸を締めつける。


 今聞いた叱り方は、ファリエルも聞き覚えがあった。
 いつしかお忍びで街に出たときに、似たようなことを言って子供を叱る親はいたし、『鍋で煮込んで……』というフレーズも全く同じだった。


(やはりどこでも魔女の扱いは変わらないのか)

 得体の知れない存在。
 だからこそ、恐ろしい。
 魔女から被害を受けたことなど一度もないくせに、『きっと怪しい奴らに違いない』と決めつけて悪者扱いする。

 横目でリリアナを見て、胸の中で人々に訴える。


 本当は、こんなにも心優しい人なのに――。
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