傷ついた王子は森の魔女に癒される
 確かに剣には心得がある。
 でも魔物と戦って、傷を負ったときに。
 痛みを感じたときに。


 僕は心を強く保ったまま、魔物と対峙し続けられるのだろうか?


 拷問のときの痛みが心によみがえる。視線が下がっていく。
 ふと、背後に立つリリアナの存在を思い出した。
 彼女に怯えた姿なんて見せたくない。

 意を決して顔を上げる。
 その拍子に、リリアナが前に回り込んできた。

「待ってくださいファリエルさん。これ、着けていってください」

 手を取り上げられて、手首に細い紐のようなものを巻かれた。
 きゅっと端を結んだリリアナが、ファリエルを見上げて柔らかな笑みを浮かべる。

「これ、私が作ったお守り(・・・)です。危険な目に遭いそうになっても、このお守りがあれば、怖いことなんてなにもないですからね。のんびり散策してきてください」


 腕を持ち上げて、白い紐で編まれたそれをじっと見る。


 ――幼い魔女も、こうして手首に巻いてくれたんだったな……。


 魔女に秘薬を作ってもらい、ほっとしながら帰ろうとした矢先に呼び止められた。
 そのときの、一生懸命に紐を結ぼうとする表情。
 結ぶのに何度も失敗していた。
 焦った顔が、次第に泣きそうになっていった。
 ファリエルが「大丈夫、ゆっくりでいい」となだめたら、ぽっと頬を赤らめていた。

 はにかんだ笑顔。
 今、はっきりと思い出せたからこそわかる。
 ――やはりあの少女はリリアナに似ている気がする。
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