傷ついた王子は森の魔女に癒される
 怒り狂う魔女が魔法の弾を投げつけながら、子供のように喚き散らす。

「『この作戦を成功させて僕が国王になれば、魔女との結婚であっても誰にも文句は言わせない』って言うから! 私、信じて待ってたのに!」

 ふと、魔法の弾の雨がやむ。
 コーデリアという名の魔女は、ほうきの上に立ち尽くして頭を抱え込んでいた。
 赤い目を見開き、長い黒髪をきつく握りしめる。

「もうすぐあいつと結婚できるって、待ちきれなくて見に行ったら……!」

 頬を引きつらせて、肩で息をする。

「……あの男、あんたの婚約者とイチャつきながらあんたの処刑を見てたのよ!? バカみたい! あんたも私も!」

 ほとんど悲鳴のような声で叫び散らしながら拳を振り下ろす。
 ファリエルを睨む目には涙がにじんでいた。

「あいつのこと、徹底的に痛めつけてやったわ。動けなくなるまでね。あいつ、頭を地面にこすりつけて、泣きながら『許してくれ』なんて必死に喚いてたけど、頭の上から特大の魔法をぶつけてやったの」

 鋭く息を吐き出す。ファリエルに向かって唾を吐くように言葉を継ぐ。

「あいつと手を組んでたあんたの婚約者も逃がさなかったわ。髪もドレスもめちゃくちゃに切り刻んでやったの。……でもそんなんじゃ気が済まないの! 忘れたいのにずっと忘れられないの! だから……」

 振りかぶった手の中に、魔法の球を出現させる。

「あんたも死になさい。どうせ本当は死んでるはずだったんでしょ? だいたい、あんたがちゃんと婚約者のことを管理できてればあんなことにはならなかったのよ!」
「……!」
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