傷ついた王子は森の魔女に癒される
 コーデリアが目を見開いた。
 ファリエルを見つめたまま微動だにしない。
 

 静寂が押し寄せる。耳の中に鼓動が鳴り響く。
 どうか、僕の願いを聞き入れて欲しい――。


 ファリエルが胸の内で祈っていると、突然。

「……ふふっ……――あははははっ!」

 コーデリアが天を仰いで笑い出した。


 なぜ笑うんだろう。反応が読めず、戸惑わずにはいられない。
 ただ、声の調子から、さげすむような雰囲気は感じ取れた。


 コーデリアはひとしきり笑ったあと、小ばかにした風な口調で吐き捨てた。

「あんたが苦しむなら好都合だわ。私は今にも死にそうになってたあんたをわざわざ助けてやったのよ? まさか、一国の王子が一度言ったことを反故にするなんて言わないわよね」

 すっと表情を消し、赤い眼光でファリエルを射貫く。

「約束通り、あんたの命をもって私に恩返ししなさい」
「……!」


 記憶を消され。
 なぜ殺されるかもわからないまま殺される。

 死を望んでしまった事実を、くつがえすことは許されなかった――。
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