傷ついた王子は森の魔女に癒される

27 最期の願い

 命をもって恩返しする以外に、僕に許される道はない――。
 絶望の底に突き落とされてなにも考えられなくなる。時が止まったかのように身体中の痛みすら遠くなっていく。

 ファリエルが黙り込んでいると、コーデリアが瓶を差し出してきた。
 死の宣告に、情けなく肩が跳ねる。
 するとコーデリアが呆れた風にため息をついた。

「これは回復薬よ。弱ってるあんたを殺したところで面白くないから、さっさと回復なさい」
「……ああ」

 魔女の薬で傷を癒す。彼女に殺されるために。
 ぼんやりとしたまま、瓶に口をつける。

「――うっ」

 回復薬はリリアナが飲ませてくれたような穏やかなものではなかった。
 むせそうになるほどの甘い味。吐き出しては失礼だと思い、息を止めて無理やり飲み込む。
 その瞬間、猛烈な眠気に襲われてファリエルはベッドに倒れ込んだ。



 目を覚ますと、室内は夕日の色に染まっていた。
 眠る前も、確か夕方だった。
 すぐに目覚めたのだろうか? あんなにも眠くなったのに。
 不思議に思いながらまばたきを繰り返す。そうするうちに、身体中の痛みが引いていることに気づいた。

 回復薬のすさまじい効能に驚きながら、慎重に起き上がる。
 ベッドから降り立ったところで、コーデリアが部屋に入ってきた。
 ちらっとファリエルを見て、椅子に腰を下ろす。足を組み、膝に手を置く。
 お互い向き合っているものの、コーデリアは敢えてファリエルから視線を外しているようだった。
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