キスしない約束の恋

第11話 隠していた理由

「シロ」

 

 

 放課後。

 

 

 帰ろうとしたとき。

 

 

 声をかけられる。

 

 

 振り向くと。

 

 

 美玲さんだった。

 

 

 

「ちょっといい?」

 

 

 

 いつもの明るさじゃない。

 

 

 

 少しだけ、真剣な顔。

 

 

 

「……はい」

 

 

 

 

「聞きたいことある」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「なんで、顔隠してたの?」

 

 

 

 

 心臓が、止まる。

 

 

 

 

 その質問。

 

 

 

 

 一番、触れられたくない。

 

 

 

 

「……別に」

 

 

 

 

「別にじゃないでしょ」

 

 

 

 

 逃げられない。

 

 

 

 

「理由ある顔してる」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 言いたくない。

 

 

 

 

 思い出したくない。

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 

「……前に」

 

 

 

 

 口が、勝手に動く。

 

 

 

 

「言われたことがあって」

 

 

 

 

「何て?」

 

 

 

 

「……気持ち悪いって」

 

 

 

 

 空気が、止まる。

 

 

 

 

「笑わないし、目が怖いって」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「それから、見せないようにしました」

 

 

 

 

 静かに言う。

 

 

 

 

「そしたら、何も言われなくなったので」

 

 

 

 

 それでいいと思った。

 

 

 

 

 楽だった。

 

 

 

 

 

「……バカだね」

 

 

 

 

 ぽつりと、美玲さんが言う。

 

 

 

 

「え……」

 

 

 

 

「そんなの、そいつらの見る目がないだけ」

 

 

 

 

 きっぱりと。

 

 

 

 

「隠す理由にならない」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「むしろ」

 

 

 

 

 少しだけ、笑う。

 

 

 

 

「今の方がよっぽどもったいない」

 

 

 

 

 その言葉に。

 

 

 

 

 胸が、揺れる。

 

 

 

 

 

「神崎もさ」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「珍しいよ」

 

 

 

 

「え」

 

 

 

 

「あんな顔するの」

 

 

 

 

 意味が、わからない。

 

 

 

 

「本気になりかけてる」

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

「だから」

 

 

 

 

 少しだけ、優しくなる。

 

 

 

 

「ちゃんと向き合いな」

 

 

 

 

「逃げないで」

 

 

 

 

 

 その言葉が。

 

 

 

 

 まっすぐ、刺さる。

 

 

 

 

 

 怖い。

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 

 

 ――逃げたくない。

 

 

 

 

 

 そう思ってしまった自分に。

 

 

 

 

 

 一番、驚いていた。
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