キスしない約束の恋

最終話 はじめてのキス

 ――逃げない。

 

 

 そう決めた。

 

 

 

 放課後。

 

 

 校舎裏。

 

 

 

「シロ」

 

 

 呼ばれる。

 

 

 

 振り向く。

 

 

 

 ちゃんと、見る。

 

 

 

 逃げない。

 

 

 

「……話す」

 

 

 

 自分から言う。

 

 

 

 

「私」

 

 

 

 深呼吸する。

 

 

 

 

「怖かったです」

 

 

 

 

「今も、怖いです」

 

 

 

 

「でも」

 

 

 

 

 顔を上げる。

 

 

 

 

「逃げたくない」

 

 

 

 

 

 沈黙。

 

 

 

 

 

「……そっか」

 

 

 

 

 少しだけ、笑う。

 

 

 

 

 

「じゃあ俺も」

 

 

 

 

 

 一歩、近づく。

 

 

 

 

 

「ちゃんとする」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

「遊びとかじゃなくて」

 

 

 

 

 

「お前と向き合う」

 

 

 

 

 

 まっすぐに言う。

 

 

 

 

 

「だから」

 

 

 

 

 

「好きだ」

 

 

 

 

 

 空気が、止まる。

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

 心臓が、うるさい。

 

 

 

 

 

「……私も」

 

 

 

 

 やっと、出た声。

 

 

 

 

 

「……好きです」

 

 

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 

 

 距離が、縮まる。

 

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 

 

 止まる。

 

 

 

 

 

「……いい?」

 

 

 

 

 

 初めて。

 

 

 

 

 

 確認される。

 

 

 

 

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 小さく頷く。

 

 

 

 

 

 そっと。

 

 

 

 

 

 顔が、近づく。

 

 

 

 

 

 触れる。

 

 

 

 

 

 ――はじめてのキス。

 

 

 

 

 

 優しくて。

 

 

 

 

 

 怖くなくて。

 

 

 

 

 

 ちゃんと、大切にされているとわかるキス。

 

 

 

 

 

 離れたあと。

 

 

 

 

 

「……やっとできた」

 

 

 

 

 

 少しだけ笑う。

 

 

 

 

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 気づけば。

 

 

 

 

 

 私も、笑っていた。

 

 

 

 

 

 ――顔を隠していた私が。

 

 

 

 

 

 初めて、前を向いた日。

 

 

 

 

 

 その隣には。

 

 

 

 

 

 変わった彼がいた。

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

 これからも。

 

 

 

 

 

 一緒に、変わっていく。

 

 

 

 

 

 そんな未来を。

 

 

 

 

 

 少しだけ、信じられる気がした。
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