キスしない約束の恋

第6話 本当は

 ――どっちがいいのか。

 

 わからない。

 

 

 蓮は、変わろうとしてる。

 

 でも、怖い。

 

 

 湊は、壊さないって言う。

 

 でも、何かが違う。

 

 

「……わかんない」

 

 

 放課後。

 

 ひとりで屋上にいた。

 

 

 考えれば考えるほど。

 

 苦しくなる。

 

 

「沙奈」

 

 

 声。

 

 

 振り向くと。

 

 

 湊。

 

 

「……またひとり?」

 

 

「……はい」

 

 

 

「そろそろ決めた?」

 

 

 近づいてくる。

 

 

「どっち選ぶか」

 

 

「……」

 

 

 言えない。

 

 

 

「怖い?」

 

 

 

「……はい」

 

 

 

「大丈夫」

 

 

 

 優しく言う。

 

 

 

「俺なら傷つけない」

 

 

 

 その言葉。

 

 

 

 安心する。

 

 

 

 でも。

 

 

 

 ――ドキドキしない。

 

 

 

「……」

 

 

 

 その違和感に。

 

 

 

 気づいてしまう。

 

 

 

 

「ねえ、沙奈」

 

 

 

 手が伸びる。

 

 

 

 

「そろそろさ」

 

 

 

 

「俺にしなよ」

 

 

 

 

 その瞬間。

 

 

 

 

「……無理です」

 

 

 

 

 自然に、出た言葉。

 

 

 

 

「……え」

 

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 心臓が、うるさい。

 

 

 

 

 

「私」

 

 

 

 

 

「安心したいわけじゃない」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

「怖くてもいいから」

 

 

 

 

 

「ちゃんと、好きな方を選びたい」

 

 

 

 

 

 その言葉に。

 

 

 

 

 

 湊の表情が、変わる。

 

 

 

 

 

「……そっか」

 

 

 

 

 

 少しだけ、笑う。

 

 

 

 

 

「やっぱり蓮なんだ」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 否定できない。

 

 

 

 

 

 

「最初からそうだと思ってた」

 

 

 

 

 

 静かに言う。

 

 

 

 

 

 

「でもさ」

 

 

 

 

 

 一歩、近づく。

 

 

 

 

 

 

「それ、絶対後悔するよ」

 

 

 

 

 

 

 その言葉に。

 

 

 

 

 

 

 少しだけ、怖くなる。

 

 

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 

 

 

「……それでもいいです」

 

 

 

 

 

 

 はっきり言う。

 

 

 

 

 

 

 ――そのとき。

 

 

 

 

 

 

「沙奈!!」

 

 

 

 

 

 

 声が響く。

 

 

 

 

 

 

 振り向くと。

 

 

 

 

 

 

 蓮。

 

 

 

 

 

 

 息を切らして。

 

 

 

 

 

 

 走ってきた。

 

 

 

 

 

 

「……何してんだよ」

 

 

 

 

 

 

 強い声。

 

 

 

 

 

 

 でも。

 

 

 

 

 

 

 どこか、焦ってる。

 

 

 

 

 

 

 

「……選んでただけ」

 

 

 

 

 

 

 湊が言う。

 

 

 

 

 

 

 

「結果は?」

 

 

 

 

 

 

 

 静寂。

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 私は。

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくり。

 

 

 

 

 

 

 

 蓮の方へ、歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 それだけで。

 

 

 

 

 

 

 

 答えは、十分だった。
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