かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 バルテリス側との何らかの折衝がうまくいかないのだろうか。王国内に侯爵の手の者を入れることを拒まれている可能性もなくはない。ルスランはまさか犯人がダニールのおまじないを邪魔するほどの相手だとは知らなかったのだ。

 メレルス家当主だという犯人は常にここにいるわけではない。忠実な家令だか何かと女中が世話してくれている。
 ここの使用人たちは皆、人族のようだった。なので客人に逃げられないよう、さまざまな仕掛けがしてある。
 冬告げの姫というメレルスの思い込みに反してルスランもリージヤもごく普通の妖精だった。簡単なおまじないなら日常的に唱えるが、効果もさほど強くはない。そんな二人ではまったく歯が立たない、おまじない阻害術(・・・・・・・・)がこの邸には掛けられていた。

 むしろ物理的になら出て行けるか。ルスランは最初、考えた。つまり窓を叩き割って、とか。
 そうしなかったのは、メレルスを放置して逃げ帰るよりは叩きつぶしておきたかったからだ。ファロニアとしても理由なく異国の商人をどうこうできない。二人がここにいるのが最も有力な証拠になるだろう。なので、待つ。
 しかし意外と遅くて退屈だ。ルスランはぼやいた。

「兄さん何してるんだろう」
「ミュシカに手こずってるのかも」
「子育て未経験者だよ? 子どもの世話なんて任されっこないさ」

 実際にはイグナートとラリサ夫妻が補助につきミュシカを連れ歩いているのだが、そんなこと本物の両親は知らない。
 リージヤは小さく笑った。

「ルスランと二人ですごすのも、昔みたいでいいんだけど」

 リージヤは夫の背に手をまわし、胸に顔をうずめた。ルスランも優しく腕で包む。娘に妻を取られないのは、確かにちょっと嬉しかった。
 でもそろそろ、家に帰りたい。

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