嘘つきな患者と、私の先生。
緊急搬送
ある日の昼休み
「ねぇ菜月、ほんとに大丈夫?」
紗良が覗き込んでくる。
「大丈夫だって」
机に突っ伏したまま返す。
「顔色やばいって」
「気のせい」
「大丈夫だし」
「病院行った?」
「行ってない」
「なんで」
「嫌いだから」
いつものやり取り。
でも——
「……っ」
胸が、ぎゅっと締まる。
「え、ちょっと?」
息が、うまくできない。
「……っ、は……」
(やば)
一気に来る。
「菜月?!」
紗良の声が遠い。
「ねぇ、呼吸して!」
できない。
「くすり……」
バッグを探る。
手が震えて、
うまく取れない。
「ちょ、やばいってこれ!」
紗良が完全に焦ってる。
「っ……は……っ」
視界が揺れる。
音が遠くなる。
(やばい)
(これ、いつもと違う)
「菜月!!」
名前を呼ばれる。
でも。
もう、力が入らない。
そのまま——
意識が落ちる。
サイレンの音。
遠くで、鳴ってる。
「……っ」
薄く目を開ける。
揺れてる。
(……どこ)
ぼんやりした視界。
「意識戻ってきた」
知らない声。
(……救急車)
ぼんやり理解する。
「呼吸まだ浅いね」
誰かが話してる。
病院。
ストレッチャーが運ばれる。
「発作、救急搬送です」
慌ただしい空気。
「酸素準備」
「点滴いける?」
いろんな声が飛び交う。
その中で。
足音が、近づく。
「菜月」
低い声。
(……)
聞いたことある声。
安心する声。
「状態は」
少しだけ速い口調。
でも、冷静。
「今戻ってきたところです」
「分かった、こっち引き継ぐ」
そのまま横に来る。
「菜月、聞こえる?」
少しだけ近い。
「、、き、、さら、ぎ、、、せ、んせ?」
かすれた声。
「うん」
短く返ってくる。
「いるよ」
その一言で、
一気に安心する。
「呼吸合わせて」
「吐いて」
誘導される。
「……っ、は…」
少しずつ。
少しずつだけど、
呼吸が戻る。
「大丈夫」
低い声。
「もう大丈夫」
その言葉に、
力が抜ける。
「点滴入れる」
「……」
もう抵抗できない。
「力抜いて」
手を取られる。
少し強く。
でも、優しい。
針が入る。
「……っ」
「よく頑張った」
ぽつっと言われる。
「……」
ぼんやりしながら、
その声だけ聞こえる。
「ほんとに無理しすぎ」
少しだけ低い声。
「……ごめん」
自然に出る。
「謝らなくていい」
すぐ返ってくる。
「でも、もう無理はさせない」
(……なにそれ)
意味わかんないのに。
安心する。
「……こわかった」
ぽつっと漏れる。
初めての本音。
少しだけ沈黙。
それから。
「うん」
短く。
「知ってる」
手を、少し強く握られる。
「もう大丈夫だから」
(……)
目が、閉じていく。
安心して、
意識が落ちる。
「ねぇ菜月、ほんとに大丈夫?」
紗良が覗き込んでくる。
「大丈夫だって」
机に突っ伏したまま返す。
「顔色やばいって」
「気のせい」
「大丈夫だし」
「病院行った?」
「行ってない」
「なんで」
「嫌いだから」
いつものやり取り。
でも——
「……っ」
胸が、ぎゅっと締まる。
「え、ちょっと?」
息が、うまくできない。
「……っ、は……」
(やば)
一気に来る。
「菜月?!」
紗良の声が遠い。
「ねぇ、呼吸して!」
できない。
「くすり……」
バッグを探る。
手が震えて、
うまく取れない。
「ちょ、やばいってこれ!」
紗良が完全に焦ってる。
「っ……は……っ」
視界が揺れる。
音が遠くなる。
(やばい)
(これ、いつもと違う)
「菜月!!」
名前を呼ばれる。
でも。
もう、力が入らない。
そのまま——
意識が落ちる。
サイレンの音。
遠くで、鳴ってる。
「……っ」
薄く目を開ける。
揺れてる。
(……どこ)
ぼんやりした視界。
「意識戻ってきた」
知らない声。
(……救急車)
ぼんやり理解する。
「呼吸まだ浅いね」
誰かが話してる。
病院。
ストレッチャーが運ばれる。
「発作、救急搬送です」
慌ただしい空気。
「酸素準備」
「点滴いける?」
いろんな声が飛び交う。
その中で。
足音が、近づく。
「菜月」
低い声。
(……)
聞いたことある声。
安心する声。
「状態は」
少しだけ速い口調。
でも、冷静。
「今戻ってきたところです」
「分かった、こっち引き継ぐ」
そのまま横に来る。
「菜月、聞こえる?」
少しだけ近い。
「、、き、、さら、ぎ、、、せ、んせ?」
かすれた声。
「うん」
短く返ってくる。
「いるよ」
その一言で、
一気に安心する。
「呼吸合わせて」
「吐いて」
誘導される。
「……っ、は…」
少しずつ。
少しずつだけど、
呼吸が戻る。
「大丈夫」
低い声。
「もう大丈夫」
その言葉に、
力が抜ける。
「点滴入れる」
「……」
もう抵抗できない。
「力抜いて」
手を取られる。
少し強く。
でも、優しい。
針が入る。
「……っ」
「よく頑張った」
ぽつっと言われる。
「……」
ぼんやりしながら、
その声だけ聞こえる。
「ほんとに無理しすぎ」
少しだけ低い声。
「……ごめん」
自然に出る。
「謝らなくていい」
すぐ返ってくる。
「でも、もう無理はさせない」
(……なにそれ)
意味わかんないのに。
安心する。
「……こわかった」
ぽつっと漏れる。
初めての本音。
少しだけ沈黙。
それから。
「うん」
短く。
「知ってる」
手を、少し強く握られる。
「もう大丈夫だから」
(……)
目が、閉じていく。
安心して、
意識が落ちる。