藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「カラオケ行く人ー!」
「はーい!」
食事を終えて外に出ると、早速2次会の話が始まった。
「藤木部長も行きましょうよー」
「いや、俺はここで失礼させてもらうよ」
「ええー!? 残念ー」
移動を始めた男性社員を追いかけながら「今度はぜひ参加してくださいねー!」と、女の子たちが振り返る。
笑って手を振りながら見送り、姿が見えなくなると、ふうと肩の力を抜いた。
タクシーを拾って帰ろうかと振り返った瞬間、トンと女の子にぶつかってしまい、慌てて手を伸ばす。
「ごめん、大丈夫か?」
よろけた女の子の身体を支えつつ、カラオケには行かなかったのか?と、その顔を覗き込んでハッとした。
(片瀬……くるみ)
しかも今、右腕に抱いた片瀬くるみは、至近距離でハートビームを大放出している。
(ヤバイ、やられる)
咄嗟に顔を背けると、片瀬くるみは両手を頬に当てて可愛らしく呟いた。
「やだ、あの、ごめんなさい」
視覚だけでなく聴覚でもやられて、俺はダメージを食らう。
(いかん、このままでは)
手を離したいが、片瀬くるみは俺の腕に身体を預けたままだ。
(頼む、一人で立ってくれ)
その一心で、俺は両腕で片瀬くるみを抱きしめ、身体を地面と垂直に保ってから手を離す。
次の瞬間、片瀬くるみはくずおれそうになり、俺は咄嗟にまた抱きしめた。
「大丈夫か?」
俺の声は、どうやら身体越しに聞こえたらしい。
俺の胸に右の頬をつけている片瀬くるみは、一気に顔を赤らめた。
「もう、だめ……」
この甘い声は、本当に片瀬くるみの声なのか?
(いやいやいや、だめなのは俺の方だ。勘弁してくれ!)
その時、「あっ、くるみ!」と赤石千夏が遠くから駆け寄って来るのが見えた。
(おおっ、救いの神よ!)
俺は目を輝かせて、赤石千夏を待ち受ける。
「なかなか来ないなと思ったら、やっぱり……。あーあ、また発作が始まっちゃった」
「発作!? これは一体、何の発作だ?」
片瀬くるみを抱いたまま、俺は必死で赤石千夏に訴えた。
「あ、別に病気ではないし、大した発作ではないのでご心配なく。命に別状はありませんから」
「いやいや、充分大した発作だろう? 俺の寿命は縮みそうだぞ」
「ですよねー。ほんと、すみません。まさかこんなにもドンピシャな方が、くるみの前に現れるなんて……」
その時、赤石千夏が手にしていたスマホが鳴った。
「もしもし、ごめーん。すぐ行くね。あ、くるみは帰るから私だけ参加ね」
そう言うとそそくさと電話を切り、赤石千夏は無慈悲なことを告げる。
「部長、すみません。くるみはこうなると、私の手には負えないんです。申し訳ありませんが、タクシーで社宅まで送っていってもらえませんか? 多分、一人では歩けないと思うので」
「えっ、ええ!?」
赤石千夏は呆然とする俺を尻目に、通りを走っていた空車のタクシーを捕まえる。
運転手さんに社宅の住所を告げると、俺を振り返った。
「部長、カバンを持ちますね。くるみのも」
そう言って二人分のカバンをタクシーの後部シートに置くと、どうぞ、とばかりに促す。
仕方なく俺は片瀬くるみを抱いたまま、タクシーに乗り込んだ。
「タクシー代はこれで」
そう言って運転手さんにお札を渡す赤石千夏に、ようやく俺は我に返る。
「いいよ、俺が払う」
「だめですよ、こんなにご迷惑をおかけしてるんですから。大丈夫、あとでくるみに請求しますので。それではよろしくお願いします」
パタンとドアが閉まり、タクシーは走り始めた。
「はーい!」
食事を終えて外に出ると、早速2次会の話が始まった。
「藤木部長も行きましょうよー」
「いや、俺はここで失礼させてもらうよ」
「ええー!? 残念ー」
移動を始めた男性社員を追いかけながら「今度はぜひ参加してくださいねー!」と、女の子たちが振り返る。
笑って手を振りながら見送り、姿が見えなくなると、ふうと肩の力を抜いた。
タクシーを拾って帰ろうかと振り返った瞬間、トンと女の子にぶつかってしまい、慌てて手を伸ばす。
「ごめん、大丈夫か?」
よろけた女の子の身体を支えつつ、カラオケには行かなかったのか?と、その顔を覗き込んでハッとした。
(片瀬……くるみ)
しかも今、右腕に抱いた片瀬くるみは、至近距離でハートビームを大放出している。
(ヤバイ、やられる)
咄嗟に顔を背けると、片瀬くるみは両手を頬に当てて可愛らしく呟いた。
「やだ、あの、ごめんなさい」
視覚だけでなく聴覚でもやられて、俺はダメージを食らう。
(いかん、このままでは)
手を離したいが、片瀬くるみは俺の腕に身体を預けたままだ。
(頼む、一人で立ってくれ)
その一心で、俺は両腕で片瀬くるみを抱きしめ、身体を地面と垂直に保ってから手を離す。
次の瞬間、片瀬くるみはくずおれそうになり、俺は咄嗟にまた抱きしめた。
「大丈夫か?」
俺の声は、どうやら身体越しに聞こえたらしい。
俺の胸に右の頬をつけている片瀬くるみは、一気に顔を赤らめた。
「もう、だめ……」
この甘い声は、本当に片瀬くるみの声なのか?
(いやいやいや、だめなのは俺の方だ。勘弁してくれ!)
その時、「あっ、くるみ!」と赤石千夏が遠くから駆け寄って来るのが見えた。
(おおっ、救いの神よ!)
俺は目を輝かせて、赤石千夏を待ち受ける。
「なかなか来ないなと思ったら、やっぱり……。あーあ、また発作が始まっちゃった」
「発作!? これは一体、何の発作だ?」
片瀬くるみを抱いたまま、俺は必死で赤石千夏に訴えた。
「あ、別に病気ではないし、大した発作ではないのでご心配なく。命に別状はありませんから」
「いやいや、充分大した発作だろう? 俺の寿命は縮みそうだぞ」
「ですよねー。ほんと、すみません。まさかこんなにもドンピシャな方が、くるみの前に現れるなんて……」
その時、赤石千夏が手にしていたスマホが鳴った。
「もしもし、ごめーん。すぐ行くね。あ、くるみは帰るから私だけ参加ね」
そう言うとそそくさと電話を切り、赤石千夏は無慈悲なことを告げる。
「部長、すみません。くるみはこうなると、私の手には負えないんです。申し訳ありませんが、タクシーで社宅まで送っていってもらえませんか? 多分、一人では歩けないと思うので」
「えっ、ええ!?」
赤石千夏は呆然とする俺を尻目に、通りを走っていた空車のタクシーを捕まえる。
運転手さんに社宅の住所を告げると、俺を振り返った。
「部長、カバンを持ちますね。くるみのも」
そう言って二人分のカバンをタクシーの後部シートに置くと、どうぞ、とばかりに促す。
仕方なく俺は片瀬くるみを抱いたまま、タクシーに乗り込んだ。
「タクシー代はこれで」
そう言って運転手さんにお札を渡す赤石千夏に、ようやく俺は我に返る。
「いいよ、俺が払う」
「だめですよ、こんなにご迷惑をおかけしてるんですから。大丈夫、あとでくるみに請求しますので。それではよろしくお願いします」
パタンとドアが閉まり、タクシーは走り始めた。