藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「くるみ、金曜日の飲み会のあと、藤木部長にタクシーで社宅まで送ってもらったんだよ」

月曜日の朝、千夏からそう聞かされて私は首をひねった。

「えっ、あれ、夢じゃなかったの? だって温人がお姫様抱っこで運んでくれたのよ?」
「夢で実際うちまでたどり着くんかい! もう、くるみ、夢と現実がごちゃまぜになってるね。2次会のカラオケに移動中に、あれ、くるみがいないって私が気づいた時には、藤木部長に発作起こしてたよ。バーチャルドリームパラダイスに飛んでってたから、タクシー拾って藤木部長に頼んだの。あ、タクシー代立て替えたからちょうだい」
「そっか、ありがと」

私はスマホを取り出し、千夏のアカウントに送金しながら考える。

「でもさ、朝起きたら普通にベッドで寝てたよ」
「いや、当たり前でしょ! 裸でどっかのホテルで目覚めたら大問題だわ」
「温人になら抱かれたかった」
「ちょっと、くるみ。いい加減に……。え、あっ! 藤木部長」

千夏が私の背後に目をやって、驚いたように立ち上がった。

振り返ると、藤木部長が封筒を手に固まっている。

「部長。金曜日はくるみを送ってくださって、ありがとうございました。……部長?」

呆然と立ち尽くしている藤木部長の顔を、千夏が心配そうに覗き込んだ。

「どうかされましたか?」
「あ、いや、なんでもない。これ、タクシー代のお釣り」
「え? そんな、よかったのに。わざわざありがとうございます」

そう言って封筒の中を確認した千夏は、「ん? いやいや、多すぎますよね?」と部長に尋ねる。

「こんな金額な訳ないです」
「本当にそれがお釣りだ。じゃあ」

そそくさと去って行く後ろ姿を見送り、千夏は私に言う。

「藤木部長、タクシー代ほとんど払ってくれてるよ。ほら、くるみもお礼言っておいで。部屋まで運んでくれたのも部長なんだろうし」
「うん、わかった。だけど朝起きたらマンションの部屋、普通に鍵がかかってたんだよね。キーケースはいつも通りカバンに入ってたし。部長、どうやって外から鍵をかけたんだろう? やっぱり温人が……」
「そんな訳なーい! 逆にそんなことあったら怖いから。ほら、早くお礼言っておいで」

背中を押されて、私は藤木部長のデスクに向かった。
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