藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
検品とノベルティのセッティングが終わると、大量のダンボールを片瀬くるみが配送手配する。

宅配業者と一緒に指差し確認しながら、ひとつひとつ丁寧にチェック表と照らし合わせている片瀬くるみは、まさにシゴデキ女子。

先程のハートビームとはうって変わって、キリッとした眼差しの横顔は、惚れ惚れするほどかっこよかった。

(いやいや、見とれている場合か? いつまたロックオンされるかもわからないんだぞ)

己を戒め、何とか対策を練る。

(さっきは、どのタイミングでスイッチが入った? 確か野島が話しかけてきて……。そう言えば野島は、片瀬くるみと知り合いのようだったな)

そこまで考えて俺はハッとした。

(野島って、下の名前は春人(はるひと)だよな。もしや片瀬くるみは、野島のことを『はると』というあだ名で呼んで、想いを寄せているとか?)

それはあり得る。
なぜなら野島は、俺が言うのもなんだが、俺に負けず劣らずのイケメンなのだ。

おまけに31歳で既に大企業の課長、つまりいわゆるエリートイケメン。
31歳で既に部長の俺が言うのもなんだが。

女子からの告白も、俺と同じく絶えない。
モテ具合は俺と1、2を争う。

(片瀬くるみは、密かに野島に想いを寄せている。バレないように、『春人』を敢えて『はると』と呼んで。うん、我ながらいい推理だ。で、さっきのハートビームは野島に繰り出していた。野島は以前から片瀬くるみのハートビームに気づいていて、だからさっきそそくさと立ち去ったんだ。これだ! 真実はいつもひとっ……)

そこまで来て俺は頭を抱えた。

(それなら、俺がこれまで受けてきた数々のハートビームはどうなる? 近くに野島はいなかったぞ)

ガラガラと推理は崩れ、振り出しに戻った俺は、ガックリと肩を落とした。
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