藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「藤木部長、今少しよろしいでしょうか」
「ああ、なんだ?」

平静を装いつつ、密かに戦闘態勢を整える。

来るなら来い。
今日こそ真っ向から戦ってみせる。

だが彼女は、手にしたタブレットをきれいな指先でスッと操作しながら、淡々と話し始めた。

「夏にフォーラムで行われる大規模な文具フェスタですが、ポスターやノベルティ、およびホームページのデザインをこのように考えています。営業課の担当者を通じて『優しい色使いながらも、ポップで目を引くように。かつ、レトロな雰囲気も入れて』とのオーダーを先方から受けましたので、こんなふうに仕上げてみました。いかがでしょうか?」

見せられたデザインは、ピンクや水色、オレンジやクリーム色など、明るいパステルカラーでまとめられている。

そこに遊び心のあるフォントで文字が踊り、それでいてどこかで見たような懐かしさを感じさせる模様が背景に織り込まれていた。

(優しい色使いながらも、ポップで目を引くように。かつ、レトロな雰囲気も入れて……。まさにその通りだな)

そう思い、俺は片瀬くるみに大きく頷いてみせた。

「いいんじゃないか? このまま営業課の担当者に提案していいと思う」
「承知しました。ありがとうございました」

片瀬くるみは、両手を揃えてお辞儀をすると、くるりと向きを変えて自分のデスクへと戻っていく。

(えっ、それだけか?)

心の中でファイティングポーズを取っていた俺は、肩透かしを食らってそっと拳を下ろした。
< 2 / 85 >

この作品をシェア

pagetop