藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「軽い捻挫ね。湿布を貼っておきましょう。もし腫れや痛みが酷くなれば病院で受診してね」

そう言って医務室の常勤ナースが湿布を貼ってくれる。

「ん? 顔が赤いわね。ひょっとして熱がある? そのせいでめまいを起こして階段を踏み外したんじゃない?」

はい、恋の病に陥っているので。
いつも私は温人にお熱。

千夏が横から「そこには触れない方がいいです。大丈夫、すぐ治まりますので」と遮った。

すると温人が私の手を支えて「歩けるか?」と聞いてくる。

耳元で聞こえる低音ボイスに涙が込み上げ、足に力が入らない。

温人は少し考え込んでから、千夏に言った。

「彼女のカバンとパソコンを持って来てくれる? 午後から在宅ワークにさせるから」
「はい、かしこまりました」

千夏がタタッと医務室から出て行くと、私は温人と二人きりになる。

きっと漫画では、ナースはいつの間にか退場しているはずだから。

「あの、ごめんなさい。周りにたくさん人がいたのに、変な噂になったりしたら……」

私たちの関係が周囲にバレるしれないと、私は温人に謝った。

「気にするな。たとえ相手が誰だろうと同じことをした」

そうよね、それでこそ温人だわ。
でも私以外の女の子を、お姫様抱っこしてほしくない。

そう思いながらじっと温人を見つめると、温人は困ったように、ふいと顔を背けた。

もう、照れ屋なんだから。
そんなところも好き。

その時千夏が私のカバンを手に戻って来た。

「くるみ、パソコンもカバンに入れたからね」
「ありがとう」
「ロビーまで歩ける? タクシーで送るよ」
「歩けるはずだけど、ストーリー的には歩けないことになってる」
「は? もう、何言ってんの」

だってそうでしょう?
ここでくるみがスタスタと歩いたら、読者はみんなガッカリするわ。

「わかった、俺がマンションまで送る」

温人ー! そうよ、そうこなくちゃ!
またもや、キュキュキューンと胸キュンメーターが上がった私に、千夏は大きなため息をついた……ような気がした。
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