藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「じゃあ、俺はこれで。仕事に関しては追って連絡する」

片瀬くるみを部屋のベッドに座らせると、俺は視線を伏せたまま、そそくさと部屋を出た。

早くここから立ち去らねば。

だが1階のエントランスを出て、ふと気になった。

(あの足だと、生活も不自由だろうな)

そう思い、地図アプリで近くのコンビニを探して、飲み物や弁当をいくつか購入した。

届けに戻ろうとして思い留まる。

(いや、また顔を合わせるのはやめた方がいい。俺の本能がそう告げている)

しばし思案したのち、俺はインターフォンで管理人室を呼び出すことにした。

彼女のケガのことも伝えて、フォローをお願いしよう。

ピンポーンという音のあと、ムーンライトおばちゃんの声がした。

『はーい。あら、はるとさん?』

勝手に呼ぶのはやめてくれ。
いや、お互い様か。

『今日はどうしたの? また片瀬さん?』
「はい。実は彼女、会社で階段を踏み外し、足首を捻挫してしまいました。先程タクシーで送り届けたのですが、しばらくは様子を見ていただけますでしょうか? コンビニで食料品も買って来ましたので」
『あらあら、そうなのね。少し待ってて』

しばらくして現れたムーンライトおばちゃんに、俺はコンビニの袋を差し出した。

「これを片瀬さんの部屋に届ければいいのね? でもはるとさんが直接渡せばいいじゃない。さっき部屋まで行ったんでしょ?」
「そうなのですが……」
「まあ、そうよね。二人にしかわからないこともあるわよね。ムフフ」

いや、おばちゃん。
何を想像している?

「じゃあ早速、片瀬さんのところに行ってくるわ」
「はい、お願いします」
「任せて。それじゃあ」

ウキウキと去って行くおばちゃん。
どんな展開を期待している?

(まあ、いい。とにかく上司としての義務は果たしたぞ)

俺は再びタクシーで会社に戻った。
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