藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「あっ、藤木部長!」
オフィスに戻ると、赤石千夏が駆け寄って来た。
「すみません、大丈夫でしたか?」
「ああ、無事に部屋まで送り届けた。あとのことは管理人さんにお願いしてある」
「そうなんですね、ありがとうございます。私も同じ社宅住まいなので、帰ったら様子を見に行きます」
「そうか、よろしく頼む」
自分のデスクに行き、息を整えてから仕事を始める。
しばらくすると、内線電話を受けた男性社員が、俺に声をかけてきた。
「部長。文具フェスタの件で、営業課から片瀬さんに問い合わせが来てます」
「そうか、私が代理で受ける」
「お願いします。内線1番です」
「わかった」
点滅しているボタンを押して応答すると、電話の相手は『あれ?』と驚く。
『営業課の葛原と申しますが、片瀬さんは?』
「すまない。片瀬はケガをしたので、午後から在宅ワークにした。部長の私が代わりに承る」
『あ、そうでしたか。いやー、片瀬さんならなんとかしてくれるんじゃないかと思って、ダメ元で聞こうとしたのですが』
何やら言いにくそうにしながら、『実は……』と続けた。
『文具フェスタの主催者が片瀬さんのデザインを気に入って、急遽スタンプラリーで景品も用意したいと。購入先のブースでスタンプをもらって、5つ集めた人に先着で何かを差し上げるのだとか。そのスタンプラリーの台紙と景品を用意してほしいそうです』
「なんだって? 何かって、なんだ? しかも開催初日まであと8日だぞ?」
『そうなんですよね。先方も、無茶は承知の上だけど、やってくれたら嬉しいとおっしゃって。片瀬さんならひょっとして可能かもと思って、検討しますと伝えたのですが……』
俺はため息をつきそうになるのを、なんとかこらえた。
「冷静に考えてみろ。文具フェスタは、来場者数何万人だ? 5日間で6万人だぞ。その数をたった8日間で準備するなんて。しかも今日は金曜日。実質5日間しかないんだぞ?」
『そうですよね、やっぱりお断りします』
そうしてくれと頷きかけた時、ポツリと呟かれた。
『片瀬さんならやってくれそうだけどな。クライアントの依頼を断ったことないし……』
なに!?と俺は受話器を握り直す。
「片瀬は今まで無理だと言ったことがないのか?」
『はい、そうです。クライアントに喜んでいただけるなら、どんなことでもやってみせる、というのが彼女の口癖でして。先方もそれをご存じだから、無茶なオーダーをしてきたんですよね。普通なら無理でも、ウィリー・二リーの片瀬さんならやれるだろ? って』
むむっと俺は眉根を寄せた。
「ちょっと待て。今、片瀬に連絡してみる」
『ほんとですか!? よかった、お願いします』
葛原は、もうOKの返事をもらえたかのように喜ぶ。
俺は半信半疑ながらも、片瀬くるみに電話をかけた。
オフィスに戻ると、赤石千夏が駆け寄って来た。
「すみません、大丈夫でしたか?」
「ああ、無事に部屋まで送り届けた。あとのことは管理人さんにお願いしてある」
「そうなんですね、ありがとうございます。私も同じ社宅住まいなので、帰ったら様子を見に行きます」
「そうか、よろしく頼む」
自分のデスクに行き、息を整えてから仕事を始める。
しばらくすると、内線電話を受けた男性社員が、俺に声をかけてきた。
「部長。文具フェスタの件で、営業課から片瀬さんに問い合わせが来てます」
「そうか、私が代理で受ける」
「お願いします。内線1番です」
「わかった」
点滅しているボタンを押して応答すると、電話の相手は『あれ?』と驚く。
『営業課の葛原と申しますが、片瀬さんは?』
「すまない。片瀬はケガをしたので、午後から在宅ワークにした。部長の私が代わりに承る」
『あ、そうでしたか。いやー、片瀬さんならなんとかしてくれるんじゃないかと思って、ダメ元で聞こうとしたのですが』
何やら言いにくそうにしながら、『実は……』と続けた。
『文具フェスタの主催者が片瀬さんのデザインを気に入って、急遽スタンプラリーで景品も用意したいと。購入先のブースでスタンプをもらって、5つ集めた人に先着で何かを差し上げるのだとか。そのスタンプラリーの台紙と景品を用意してほしいそうです』
「なんだって? 何かって、なんだ? しかも開催初日まであと8日だぞ?」
『そうなんですよね。先方も、無茶は承知の上だけど、やってくれたら嬉しいとおっしゃって。片瀬さんならひょっとして可能かもと思って、検討しますと伝えたのですが……』
俺はため息をつきそうになるのを、なんとかこらえた。
「冷静に考えてみろ。文具フェスタは、来場者数何万人だ? 5日間で6万人だぞ。その数をたった8日間で準備するなんて。しかも今日は金曜日。実質5日間しかないんだぞ?」
『そうですよね、やっぱりお断りします』
そうしてくれと頷きかけた時、ポツリと呟かれた。
『片瀬さんならやってくれそうだけどな。クライアントの依頼を断ったことないし……』
なに!?と俺は受話器を握り直す。
「片瀬は今まで無理だと言ったことがないのか?」
『はい、そうです。クライアントに喜んでいただけるなら、どんなことでもやってみせる、というのが彼女の口癖でして。先方もそれをご存じだから、無茶なオーダーをしてきたんですよね。普通なら無理でも、ウィリー・二リーの片瀬さんならやれるだろ? って』
むむっと俺は眉根を寄せた。
「ちょっと待て。今、片瀬に連絡してみる」
『ほんとですか!? よかった、お願いします』
葛原は、もうOKの返事をもらえたかのように喜ぶ。
俺は半信半疑ながらも、片瀬くるみに電話をかけた。