藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
『承知しました。スタンプラリーの台紙6万部と、景品の手配ですね。すぐに取り掛かります』

あっさり答える片瀬くるみに、俺は驚きつつも念を押した。

「本当に可能なのか? やってみて、やっぱり無理でしたとあとで音を上げるくらいなら、今断った方がリスクマネジメント的にも……」

すると『音を上げる?』と、冷たい口調が返ってくる。

『部長、お言葉ですが。私はこれまで、引き受けた依頼を途中で放り出したことなど一度もございません。無計画に根性論でどうにかしている訳でもありません。冷静に考えて可能だから、そう申し上げているだけです』
「だが、どう判断して可能だと?」

すると片瀬くるみはひと呼吸置いてから、淡々と説明を始めた。

『まずはスタンプラリーの台紙デザインですが、これは既に納品済みのチラシやポスターのメインデザインと合わせるのが筋でしょう。少しアレンジをして5つのスタンプ欄と景品交換の文言を入れる、これは2時間あれば充分です。印刷業者は、いつもお願いしているA社に断られたとしても、他に2社、日頃からおつき合いしているところがあります。また景品ですが、先方から個数や品物の指定がないことから、こちらでいくつか提案させていただきます。例えば、缶バッジなら各日先着5千名様で経費はこれくらい。ステンレスボトルやサーモタンブラーなら各日先着300名様でこれくらい、のように。こちらも信頼できる業者の当てがありますし、デザインもメインロゴを入れる感じでどうでしょう』

「ああ、うん」と俺は押され気味に頷く。

『すぐにラフデザイン、ならびに景品の候補と見積もりを作成し、共有フォルダに入れます。それを見てご判断ください。葛原さんにも、先方には本日17時までには資料をお見せできる見込みとお伝えいただければ』
「わかった、よろしく頼む」
『かしこまりました。随時、進捗をご報告いたします。それでは一旦、失礼いたします』

もはや、ぐうの音も出ない。

俺は片瀬くるみの電話を切ると、葛原に折り返した。

『ほんとですか!? さすがは片瀬さん! ありがとうございます。早速先方にもお伝えしますね』

その後、片瀬くるみから社内チャットで「フォルダに入れました」と報告が来る。

スタンプラリーの台紙デザイン3パターン。
ロゴ入りの景品候補と見積もり5パターン。

それらをクライアントに送信したところ、台紙デザインは1つ目のデザインで、景品はミニステンレスボトル各日先着300名様、合計1500個の手配と決まった。

業者からもOKをもらい、全てのオーダーが完了する。

時計を見ると、まだ16時半だった。

「シゴデキ女子どころか、デキスギくんだろ」

俺は安堵のため息と共に呟いた。
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