藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「くるみー、ただいま」

赤石千夏が部屋のインターフォンを押して声をかけると、「はーい、今開けるね」と返事が来た。

だが、待てど暮せどドアは開かない。

(もしや、大急ぎで部屋を片付けているとか?)

タクシーの中から、赤石千夏が「藤木部長と一緒に様子を見に行くね」と話していたから。

(そんなの、気にしなくていいのに)

そう思っていると、ようやくドアが開いた。

と同時に、俺は驚いて目を見開く。

「大丈夫か!?」

片瀬くるみは、苦しそうに顔を歪め、壁に寄りかかるようにしてなんとか立っていた。

「ちょっと見せて」

俺は玄関にしゃがみ込み、そっと片瀬くるみの左足首に触れる。

痛っ………と、片瀬くるみは身をすくませた。

(昼間より随分腫れてる。熱も持ってるな。もしかして無理をしたのか?)

顔を上げて奥に目をやると、部屋の中はたくさんの資料や書類が散らばっていた。

プリンターの置かれた棚の下にも、印刷物が広がっている。

(もしや! 文具フェスタの件で?)

そうに違いない。
あれだけの仕事量を、タイムリミットを気にしながら一人でこなしたのだ。
おそらくケガのことなど、気にする余裕もなかっただろう。

自分の浅はかさに顔をしかめ、片瀬くるみを抱き上げてベッドに運ぶ。

そっと座らせると、もう一度患部に手を当てた。

(このままだとどんどん悪化する。しかも今日は金曜日だ)

俺は顔を上げて片瀬くるみに告げた。

「これから病院へ行く。まだ開いているところを急いで探すから」
「ええ!?」

驚く彼女を尻目にスマホを取り出して検索すると、電話をかけて問い合わせた。

「……はい、そうです。これからタクシーで向かいますので、15分ほどで着くと思います。よろしくお願いします」

受け入れOKの返事をもらうと、すぐさま片瀬くるみを抱き上げた。

「赤石さん、彼女のカバンを。あと、タクシーを呼んでくれるか?」
「かしこまりました」

赤石千夏はスマホでサクサクとタクシーアプリを操作してから、片瀬くるみのカバンを持ち、部屋に鍵をかける。

3人でマンションのエントランスに下りると、しばらくしてやって来たタクシーで病院へと急いだ。
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