藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「それではミーティングを始める」
午後になり、俺は会議室に集まったメンバーをぐるりと見渡した。
「今日はそれぞれ担当案件の進捗を確認したい。まずは新規の案件から。担当の山岸さん、お願いします」
「あ、は、はい」
入社5年目の女性社員が立ち上がり、俺の隣にやってくる。
「では、こちらをご覧ください」
そう言って山岸はプロジェクターに画像を映し出すが、妙な緊張感が伝わってきた。
よく見ると、頬がピンクに染まっている。
「2年前から取引させていただいているこちらの不動産会社から、新たな依頼を受けました。これまでは売り出し中のマンションのポスターやホームページのデザインを担当してきましたが、今回初めて入居者の方向けのアプリケーションを開発してもらえないか、とのことです」
俺は小さく覗いてから顔を上げた。
「つまり、システムデザインということか?」
「あ、は、はい。そうです。まだ具体的な話は、何もしていないのですが……」
前を向いていた時はスラスラと話していた山岸は、俺が隣で質問するとドキマギと視線を落とす。
会議室にいる他の女性社員も、チラチラと俺に目線を送っているのがわかった。
まぁ、こういうのには慣れている。
俺は淡々と彼女に話を続けた、
「アプリ開発は、アイコンやカラーなどの見た目のデザインだけでなく、設計図を作り、実際のプログラミングまで行えるのが当社の強みである。デジタルデザイン部やプログラミング部とも連携を取り、過去の実績と合わせて具体例を先方にご提案してみてくれ」
「あ、はい、承知いたしました」
山岸はうつむいたまま頭を下げる。
「よろしく頼む。では次、文具フェスタの件を、片瀬さんお願いします」
「はい」
資料を手に立ち上がった片瀬くるみは、顔を伏せたまま席に戻る山岸とは対照的に、背筋を伸ばしてスッと俺の隣に並んだ。
「夏休みに合わせて開催される、大規模な文具フェスタのデザイン案がこちらです。ポスターやチラシ、ホームページやノベルティなど、先方のリクエストを担当の営業課の方からうかがって作りました。藤木部長にも見ていただき、ゴーサインをいただきましたので、先方にもこちらをお送りしました。つい先程メールの返信が届き、このデザインで進めてほしいとの事でしたので、ご報告申し上げます」
いつの間に?と、俺は驚いた。
「午前中に私に見せてくれたあとに、もう話が進んだのか?」
すると片瀬くるみは、きれいな立ち姿のまま少し向きを変え、正面から俺を見つめる。
「はい。部長との話を終えたあと、営業課のフロアに行き、担当者と話し合いながら先方にメールを送りました。昼休憩を挟み、この会議の準備をしている際、先方からの返信を確認しております。そのままこの会議が始まりましたので、このような形でのご報告となりましたが、手順を逸脱しているようであればご教授ください」
顔色ひとつ変えず、何か問題でも?ファサッ、とロングヘアを片手でなびかせそうな雰囲気の、ボブヘアの片瀬くるみ。
俺の方が面食らってしまった。
「いや、大丈夫だ。何も問題ない」
「ありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」
お辞儀をすると、これまたきれいな姿勢で席に戻る片瀬くるみ。
こういうのには慣れていない。
俺は気持ちを入れ替えるように、咳払いをしてから顔を上げる。
すると目が合った女性社員が、パッと頬を赤らめてうつむいた。
そう、こういうのに慣れている。
いつもの調子を取り戻し、俺は会議を続けた。
午後になり、俺は会議室に集まったメンバーをぐるりと見渡した。
「今日はそれぞれ担当案件の進捗を確認したい。まずは新規の案件から。担当の山岸さん、お願いします」
「あ、は、はい」
入社5年目の女性社員が立ち上がり、俺の隣にやってくる。
「では、こちらをご覧ください」
そう言って山岸はプロジェクターに画像を映し出すが、妙な緊張感が伝わってきた。
よく見ると、頬がピンクに染まっている。
「2年前から取引させていただいているこちらの不動産会社から、新たな依頼を受けました。これまでは売り出し中のマンションのポスターやホームページのデザインを担当してきましたが、今回初めて入居者の方向けのアプリケーションを開発してもらえないか、とのことです」
俺は小さく覗いてから顔を上げた。
「つまり、システムデザインということか?」
「あ、は、はい。そうです。まだ具体的な話は、何もしていないのですが……」
前を向いていた時はスラスラと話していた山岸は、俺が隣で質問するとドキマギと視線を落とす。
会議室にいる他の女性社員も、チラチラと俺に目線を送っているのがわかった。
まぁ、こういうのには慣れている。
俺は淡々と彼女に話を続けた、
「アプリ開発は、アイコンやカラーなどの見た目のデザインだけでなく、設計図を作り、実際のプログラミングまで行えるのが当社の強みである。デジタルデザイン部やプログラミング部とも連携を取り、過去の実績と合わせて具体例を先方にご提案してみてくれ」
「あ、はい、承知いたしました」
山岸はうつむいたまま頭を下げる。
「よろしく頼む。では次、文具フェスタの件を、片瀬さんお願いします」
「はい」
資料を手に立ち上がった片瀬くるみは、顔を伏せたまま席に戻る山岸とは対照的に、背筋を伸ばしてスッと俺の隣に並んだ。
「夏休みに合わせて開催される、大規模な文具フェスタのデザイン案がこちらです。ポスターやチラシ、ホームページやノベルティなど、先方のリクエストを担当の営業課の方からうかがって作りました。藤木部長にも見ていただき、ゴーサインをいただきましたので、先方にもこちらをお送りしました。つい先程メールの返信が届き、このデザインで進めてほしいとの事でしたので、ご報告申し上げます」
いつの間に?と、俺は驚いた。
「午前中に私に見せてくれたあとに、もう話が進んだのか?」
すると片瀬くるみは、きれいな立ち姿のまま少し向きを変え、正面から俺を見つめる。
「はい。部長との話を終えたあと、営業課のフロアに行き、担当者と話し合いながら先方にメールを送りました。昼休憩を挟み、この会議の準備をしている際、先方からの返信を確認しております。そのままこの会議が始まりましたので、このような形でのご報告となりましたが、手順を逸脱しているようであればご教授ください」
顔色ひとつ変えず、何か問題でも?ファサッ、とロングヘアを片手でなびかせそうな雰囲気の、ボブヘアの片瀬くるみ。
俺の方が面食らってしまった。
「いや、大丈夫だ。何も問題ない」
「ありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」
お辞儀をすると、これまたきれいな姿勢で席に戻る片瀬くるみ。
こういうのには慣れていない。
俺は気持ちを入れ替えるように、咳払いをしてから顔を上げる。
すると目が合った女性社員が、パッと頬を赤らめてうつむいた。
そう、こういうのに慣れている。
いつもの調子を取り戻し、俺は会議を続けた。