藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
ハートビーム
それからしばらくして、俺は人事部の部長との面談に呼ばれた。

「どうかな? 藤木くん。グラフィックデザイン部にはもう慣れた?」
「はい。仕事は円滑に進んでおりますし、特に大きな問題点も見当たりません」
「そうか、それはよかった。あの部署は精鋭揃いだからな。特に、入社まだ4年目の片瀬さん」

その名前に、俺はドキッとする。

油断した。
まさかここでその名を聞くとは。

「どうだい? 彼女は」
「どう……とは?」

一体何を聞かれているのだろう。
もしや、あのことだろうか。

隙のない完璧なシゴデキ女子が、突然繰り出すハートビーム。

不可解なあの光線の威力は、自分にとっては脅威である。

そのことを話すべきなのだろうか?

ついでに言うと、あのビームが繰り出される頻度とシチュエーションを分析した結果、まるで脈絡もなく唐突に飛んでくるという結論に至ったことも。

(よって俺は、ますます頭を悩ませて怯えている。それを心配してくださっているのか?)

そう思っていると、「彼女、すごいだろう?」と笑いかけられた。

すごいのは事実だ。
色んな意味で。

そこは俺も「そうですね」と頷く。

「だろう? なんだろな、今時の若者なのに、片瀬さんにはベテランの貫禄がある。年長者が若い社員を指導すると角が立つような場面も、同年代の彼女が指摘することで丸く収まるんだ。人当たりもいいしね。先輩からも後輩からも、もちろん同期からも慕われている。更にはデザインのセンスもいいし、クライアントからも喜ばれている。ああいう子が一人いてくれるだけで、我々も大いに助かる。そう思わないか?」
「そうは思わ……ます」

俺としたことが、変な日本語になってしまったじゃないか。

こんなところにまで影響を及ぼす片瀬くるみ、恐るべし。

「7月末に、部署のメンバー全員の評価シートを君に書いてもらいたいから、今のうちに進めておいてくれ。結構な人数いるからね、君の部署は」
「はい、かしこまりました」

それは、片瀬くるみの評価シートも書くということか。

書けるのか?俺。

「じゃあ藤木くん、よろしく頼むよ」

よろしく頼まれてしまった俺は「かしこまりました」とキリッと答えるしかなかった。
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