藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「海が見える! キラキラして素敵」
駐車場に車を停めると、片瀬くるみは窓から見える景色に目を輝かせた。
「あそこの桟橋から船も出てるんですね」
「ああ。ぐるっと一周して戻って来る遊覧コースもある」
「そうなんですね。船なんて、もう何年も乗ってないなぁ」
「じゃあ乗ってみるか?」
思わずそう言ってしまった。
片瀬くるみは、え?と俺を振り仰いでから「いいんですか?」と控えめに聞いてくる。
「もちろん」
やっぱりだめだとも言えず、俺は頷いてチケットを買いに行った。
「お待たせ。停泊しているあの船が、あと5分で出るらしい。行こう」
そう言っていつものように抱き上げようとすると、片瀬くるみは周囲の目を気にしたのか、身を引いた。
「いえ、あの、大丈夫ですから」
「は? 大丈夫とかいう問題じゃないだろ。歩くのは禁止。守れないなら船にも乗らない」
きっぱりそう言うと、「そんな……」としょんぼりする。
「ほら、さっさと行くぞ」
「はい」
仕方なく、といった感じで、片瀬くるみは俺に両腕を伸ばして抱きつく。
その瞬間、俺は胸がキュンと締めつけられた。
(な、何だ今のは? 不整脈か?)
なかなか抱き上げないのを不思議に思ったのか、首に抱きついたまま片瀬くるみが「部長?」と小首をかしげて見上げてくる。
(か、可愛い)
ギュイーン!と何かのメーターが上がり、俺は片瀬くるみを一気に抱き上げると、桟橋を渡って船に乗り込んだ。
「やーん、見てあのカップル。ラブラブ」
そんな声が聞こえてきて、片瀬くるみの頬は真っ赤になる。
俺はそのままデッキに上がり、手すりの前でそっと片瀬くるみを下ろした。
「ありがとうございます。わあ、きれい!」
潮風を受けながら、右手で髪を押さえつつ、片瀬くるみは子どものように身を乗り出す。
「部長! あれ、カモメ?」
「ん? ああ、そうだな」
「あっ、汽笛が鳴った! もうすぐ動く?」
「ああ、動くよ」
無邪気にはしゃぐ片瀬くるみに、俺も自然と頬が緩んだ。
「動いた! すごーい、白波が立ってる。お魚見えるかな?」
「おっと! 危ないぞ。落ちたらどうする?」
「大丈夫。私、泳げますから」
「そういう問題じゃない」
「あはは!」
「……あはは?」
噛み合わない会話も楽しそうに笑うその様子に、俺はしばし考え込む。
(ひょっとして普段仕事ばかりで、こういう息抜きもしてこなかったのか?)
だから今、こんなにも楽しそうなのだろう。
(好きな相手にちゃんと想いを伝えて、つき合えばいいのに。この子の告白を断る男なんて、そうそういないだろう)
美人で仕事もできて、だけど些細な事にもこんなに目を輝かせて喜んでくれる。
(気分転換になるならと連れ出したが、思いがけず俺にとっても良い時間になったな。この子が俺を楽しませてくれている)
これまでつき合った何人かの女の子とは、デートしてもここまで楽しかった記憶はない。
ショッピングでほしいものをねだられ、写真映えするカフェで食事もそこそこにSNSの投稿に夢中になる。
そういう子が多かった。
(船に乗ろうなんて言ったら、髪が乱れる、とか嫌な顔されそうだったし。そもそも外を歩くのも、日焼けするとか言われたしな)
顔を上げて太陽を仰ぎ、風に目を細める片瀬くるみが水面のようにキラキラ輝いて見え、俺は思わず頬を緩めた。
駐車場に車を停めると、片瀬くるみは窓から見える景色に目を輝かせた。
「あそこの桟橋から船も出てるんですね」
「ああ。ぐるっと一周して戻って来る遊覧コースもある」
「そうなんですね。船なんて、もう何年も乗ってないなぁ」
「じゃあ乗ってみるか?」
思わずそう言ってしまった。
片瀬くるみは、え?と俺を振り仰いでから「いいんですか?」と控えめに聞いてくる。
「もちろん」
やっぱりだめだとも言えず、俺は頷いてチケットを買いに行った。
「お待たせ。停泊しているあの船が、あと5分で出るらしい。行こう」
そう言っていつものように抱き上げようとすると、片瀬くるみは周囲の目を気にしたのか、身を引いた。
「いえ、あの、大丈夫ですから」
「は? 大丈夫とかいう問題じゃないだろ。歩くのは禁止。守れないなら船にも乗らない」
きっぱりそう言うと、「そんな……」としょんぼりする。
「ほら、さっさと行くぞ」
「はい」
仕方なく、といった感じで、片瀬くるみは俺に両腕を伸ばして抱きつく。
その瞬間、俺は胸がキュンと締めつけられた。
(な、何だ今のは? 不整脈か?)
なかなか抱き上げないのを不思議に思ったのか、首に抱きついたまま片瀬くるみが「部長?」と小首をかしげて見上げてくる。
(か、可愛い)
ギュイーン!と何かのメーターが上がり、俺は片瀬くるみを一気に抱き上げると、桟橋を渡って船に乗り込んだ。
「やーん、見てあのカップル。ラブラブ」
そんな声が聞こえてきて、片瀬くるみの頬は真っ赤になる。
俺はそのままデッキに上がり、手すりの前でそっと片瀬くるみを下ろした。
「ありがとうございます。わあ、きれい!」
潮風を受けながら、右手で髪を押さえつつ、片瀬くるみは子どものように身を乗り出す。
「部長! あれ、カモメ?」
「ん? ああ、そうだな」
「あっ、汽笛が鳴った! もうすぐ動く?」
「ああ、動くよ」
無邪気にはしゃぐ片瀬くるみに、俺も自然と頬が緩んだ。
「動いた! すごーい、白波が立ってる。お魚見えるかな?」
「おっと! 危ないぞ。落ちたらどうする?」
「大丈夫。私、泳げますから」
「そういう問題じゃない」
「あはは!」
「……あはは?」
噛み合わない会話も楽しそうに笑うその様子に、俺はしばし考え込む。
(ひょっとして普段仕事ばかりで、こういう息抜きもしてこなかったのか?)
だから今、こんなにも楽しそうなのだろう。
(好きな相手にちゃんと想いを伝えて、つき合えばいいのに。この子の告白を断る男なんて、そうそういないだろう)
美人で仕事もできて、だけど些細な事にもこんなに目を輝かせて喜んでくれる。
(気分転換になるならと連れ出したが、思いがけず俺にとっても良い時間になったな。この子が俺を楽しませてくれている)
これまでつき合った何人かの女の子とは、デートしてもここまで楽しかった記憶はない。
ショッピングでほしいものをねだられ、写真映えするカフェで食事もそこそこにSNSの投稿に夢中になる。
そういう子が多かった。
(船に乗ろうなんて言ったら、髪が乱れる、とか嫌な顔されそうだったし。そもそも外を歩くのも、日焼けするとか言われたしな)
顔を上げて太陽を仰ぎ、風に目を細める片瀬くるみが水面のようにキラキラ輝いて見え、俺は思わず頬を緩めた。