藤木部長にロックオン〜あの子のハートビームから逃げられない〜
「おかえりなさい」
「ただいま。こら、歩いちゃだめだろ」
「あ……思わず来ちゃった」

昼になり、玄関の開く音がすると、私はつい部長を出迎えに行ってしまった。

「仕方ないな」

部長は靴を脱ぐと、いきなり私を抱き上げる。

「きゃっ」

私は驚いて、思わず部長の首にしがみついた。

胸がドキドキとうるさく、顔が赤くなったのは見なくてもわかる。

「下ろしてください、もう大丈夫だから」

私は部長の胸に顔を伏せて訴えた。

「どこがだ。まだ3日目だぞ? 1週間は安静にって言われただろう」
「でも、もうそんなに痛くないし」
「だからって歩いたら、またぶり返すぞ。ほら、おとなしく座ってろ」

そう言って部長は、私をそっとソファに下ろす。

私は両手を胸に当てて、必死に呼吸を整えた。

「ん? 昼食も作ってくれたのか?」

ネクタイの結び目に指をかけながら、部長はダイニングテーブルに目をやる。

「あ、はい。すぐに食べられますから」

立ち上がろうとする私を、部長はまたしても真剣に止めた。

「座ってろ。俺がやる」
「はい」

部長は寝室で着替えて来ると、改めてテーブルに並べられた料理に目を見開く。

「うまそうだな。これは?」
「ロコモコ丼とミネストローネです。あり合わせの材料で作ったから、変な組み合わせですみません」
「とんでもない、ものすごく美味しそうだ。レンジで温めればいいか?」
「あ、さっき作り終えたばかりなので、まだ温かいと思います」
「そうか。じゃあ早速いただこう」

そう言うと部長は、ソファまで来ていつものように私を抱き上げた。

少しでも軽くなればと、部長の首に腕を回して、身体を浮かせようと試みる。

「ん? よじ登ろうとしてんの?」
「違います。あの、私って重いですよね?」
「いや、ちょうどいい」

ちょうどいい?
どういう意味だろう、筋トレにちょうどいいとか?

そう思っていると、部長はダイニングの椅子に私をそっと座らせた。

「ありがとうございます」
「どういたしまして、お姫様」

笑いながら、ポンポンと私の頭の上に手を置く部長。

こんな距離感だったっけ?
私は戸惑ってうつむきながら、緊張気味に昼食を食べた。
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